例えば、某中堅企業の商社でのコンサルティングで、社員の生の声まで収集・分析できる調査を行ったところ、コミュニケーション面での真の課題を特定することができました。それは「現場であいさつが交わされていない」という根本的な問題。特に職位が上位になるほどこの傾向が高いこともわかりました。その後、会社では上司からあいさつや声かけを行う、「リーダーコール運動」を展開するようになりました。

すると翌年の調査ではスコアアップを確認できたと同時に、コミュニケーションが改善したことで、上司の部下へのタイムリーな助言やアドバイスが増え、業績向上も同時に実現したのです。

エンゲージメントを向上するのに必要な「土台」

エンゲージメント向上施策としてコミュニケーションを活性化しようと、さまざまなITツールを導入するような事例、また従業員の待遇や福利厚生の改善などもよく耳にします。

実際こうした企業からこんな相談を受けるケースがあります。「コミュニケーション活性化のためにIT関係の投資をしたが、エンゲージメントが上がった実感がない」「社員の給与アップや休日の増加また福利厚生の改善を行ったのに離職が止まらない」。

こうした施策がエンゲージメント向上にまったく効果がないわけではないですが、現実問題として、このような対策は上滑りしがちです。その原因は、従業員エンゲージメントが向上する「土台」が形成されていないからです。「基礎」ができていないと言ってもよいかもしれません。

土台や基礎作りとして、必要なものがいくつかあります。1つは従業員の「仕事観」を確認することです。仕事観とは、仕事に対する自分なりの価値観や向き合い方をいいます。