「このフレーズがこうなっているのは、こういうルールだからなのか」「でも、この場合は例外なんだな」という具合に、すでに頭に入っているフレーズと照合するかたちで、実践的に基本ルールと例外を学んでいくことができるからです。

というわけで、私は「先にしっかり文法を学び、後で会話力を身につける」という論理的な学び方ではなく、「先にフレーズを蓄積して会話力の素地を作ってから、自然に文法を学んでいく」、という感覚的な学び方をおすすめします。

外国語学習を「苦しい勉強」から「楽しい遊び」に変えていく。楽しいから続けられるし、続けられるから多くの言語を学べる。そんな楽しみに満ちた外国語学習の道のりを、ぜひ多くの人に歩んでいただけたら嬉しいです。

「母語」で話しかければ、「心」にまで届く

今は翻訳ツールがかなり発達してきています。生成AIの登場もあり、近い将来、通訳や翻訳の仕事はなくなるのではないかとも言われています。そんな中、なぜ私が外国語を学び続けるのかと不思議に思う人もいるかもしれません。

外国語を学べば学ぶほど、「努力してきて本当によかったな」と思うことがあります。それは、相手の母語で話すと、言語の壁を一瞬で乗り越えて一気に打ち解けてしまうことです。

かつてアパルトヘイト廃止を訴え続けた南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領はこう言い残しました。

「相手が理解している言語で話しかければ、それは相手の頭に届く。しかし、相手の『母語』で話しかければ、それは相手の『心』にまで届く」。