今回も、年金の財政検証で、保険料拠出期間を45年に延長する案が試算されることとなる。再び試算される背景には、5年前の試算結果で顕在化した国民年金の給付水準の低さにある。

特に、国民年金の加入者は、昔は自営業者が多くを占めており、ほぼ生涯現役で老後も所得を稼ぎ、年金給付はその足しにする程度でも生活が成り立っていた面はある。

しかし、今や国民年金の加入者は1990年代以降の非正規雇用者が多い。

しかも、年金保険料は給料から天引きされて毎月欠かさず納められるということではなく、自ら納める手続きをとらなければならないから、未納者もいる。未納が多いと、その分だけ基礎年金の給付はもらえない。国民年金加入者に報酬比例年金はなく、基礎年金の給付しか受けられない。

単身で老後を迎える非正規雇用者

加えて、非正規雇用者は、正規雇用者と比べて未婚率が高い。そのため、単身者として老後を迎えることになると、夫婦2人の年金給付でお互いを支えあうという形では生活できず、自らの国民年金の給付と蓄えだけで生活を成り立たせなければならない。

そうなると、国民年金の給付はそれなりの水準が確保されていないと、老後の所得保障ができないということになる。

だからこそ、国民年金の給付水準を高めるために保険料拠出期間を延ばしてはどうかという話になっている。

確かに、5年分保険料を拠出しなければならない対象者にとっては、保険料だけ負担させられた割には給付がもらえないなら、拠出期間の延長には反対するだろう。

ただ、見かけ上の給付と負担の関係は、(もちろん生存期間によるが期待値の意味で)給付の方が多くなる。なぜなら、給付の財源の半分は、自分が負担していないかもしれない税金で給付のかさ上げをしてくれるからである。