「私の記憶では、初めて採用されたときから、(SCが)会計年度任用職員になるまで言われ続けてきました。連絡会には(職能団体である)東京公認心理師協会の担当者も参加していましたが、誰一人、この発言を問題視する人はいませんでした」

そして、「私が子どもを産むのをやめたのは、都教委のこの言葉が大きかったです」と打ち明ける。

夫が自営業で収入に波があり、時任さんがSCの仕事で得る賃金が収入の柱。都のSCになる前は家賃の支払いが心配になることもあったという。子どもを産むことも考えたが、そうすると世帯収入は激減する。SCに復職できる保証もない。夫とは「無理だよね」「もういいよね」というやり取りをぽつぽつと交わすうちに、出産できる年齢が過ぎていった。

学校からの業績評価はオールA

SCの仕事は意外と忙しい、と時任さんは言う。「子どもや保護者との面談や、先生との打ち合わせを合わせると多いときで1日で10件の約束が入ることもあります。中には部活が終わってからでないと時間が取れない先生もいる。そんな日はトイレに行く暇もないほどです」。

夜間、時任さんの仕事が終わるのを待っていた管理職と一緒に最後に学校を出ることもあるという。学校からの業績評価はオールA。雇い止めを伝えた保護者たちは一様にショックを受けていたという。

「『ここでしか話せないのに』『4月からだれに相談すればいいんですか』と言われました。『教育委員会に電話します。PTAでも問題にする』とおっしゃってくれた人もいました」と時任さん。子どもや保護者と面談を重ね、もう少しで専門機関につなげるための提案ができそうだったケースもあったが、それもご破算だという。築いてきた信頼関係まで、新しいSCに引き継ぐことは難しいからだ。

ほかのSCたちと同じく時任さんにとっても雇い止めは寝耳に水だった。

「新しいSCを育てることは必要だと思います。でも、だからといって学校から信頼されている力のあるSCをこんなに大勢切る必要があるんでしょうか。それによって一番困るのはだれなのか。都教委は考えてほしい」と訴える。

20年近くSCとして歩んできた半生について、時任さんはこう振り返る。

「子どもを産まなかったことを後悔しているわけではないんです。でも、その分仕事だけは続けたいと思ってきました。SCは私の生きがいです」

時任さんは2つの小学校を受け持っている。雇い止めによる減収は約340万円になる見込みだ。