ここ数年連続ドラマで木村拓哉が演じてきたのは、『グランメゾン東京』(TBS系・2019年)のフランス料理シェフ、『BG〜身辺警護人〜第2章』(テレビ朝日系・2020年)のボディガード、『未来への10カウント』(テレビ朝日系・2022年)での人生のリングに返り咲く高校ボクシング部のコーチ、『風間公親-教場0-』(フジテレビ系・2023年)の新人刑事の刑事指導官、などだ。

大雑把にくくれば、いずれも孤高の天才が周囲を巻き込み、または周囲に影響を与えながら未来を切り開いていく成功物語と言えるだろう。職業は異なるが、演じてきた人物像には共通するヒーロー性がある。

木村拓哉の強烈な個性が宿るそれらの役は、アンチからは“何を演じてもキムタク”と言われながらも、彼が演じるからこそ生まれる圧倒的なオーラをまとうキャラクターを体現し、スターの存在感を存分に放ってきた。

しかし、本作は異なる。犯罪者となり、刑務所の中から無実を訴えて人生を取り戻そうとする元会社員の再生物語では、これまでの強い人間ではなく、木村拓哉オーラをうちに押し込めて、弱い人間を繊細に演じている。

作品ごとに幅広い役柄を自分のものにしてきた木村拓哉だが、また1つの新しいタイプのキャラクターに挑む本作を、どのように自身のカラーに染めていくのか。

木村拓哉自身のキャラクターと重なる点でいえば、第1話では、刑務所で巨漢の囚人を軽く組み伏せる、腕っぷしの強さを示すシーンがあった。本作の主人公の人物像としてはそぐわない気もするが、そこには本人のマッチョイズムが反映されているのかもしれない。物語が進行しながら、狩山陸と木村拓哉がどうシンクロしていくかは、1つの注目ポイントになりそうだ。

物語のカギになる3つのポイント

この先、狩山は真実を明らかにするために、会社と闘っていくことになるが、刑務所区長・林一夫(上川隆也)が関わる、得たいの知れない何かが背後にあることも匂わせている。

刑務所で最大の権力を持ち、狩山の行動を監視する怪しい存在として描かれた林がキーマンの1人になることは間違いないが、ほかにも3つポイントがありそうだ。