しかし日本の場合、半導体関連企業の株価が、どれもこのように上昇しているわけではない。

イメージセンサー半導体で世界一のメーカーであるソニーの株価は、年初から最近時点までに13095円から12950円へと下落している。シリコンウエハーで世界シェア第1位の信越化学の株価は、5725円から6588円へと1.15倍であり、日経平均上昇率を下回る。

また、配下にイギリスの半導体設計企業アームを持つソフトバンクの株価も上昇していると言われるが、年初から最近時点までの変化は、1811円から1947円と1.07倍であり、あまり高い値ではない(ソフトバンクの場合、中国のIT企業の時価総額が減少していることによるマイナスの影響が大きいのではないかと考えられる)。旧東芝メモリのキオクシアの業績は悪化している。

日本の半導体製造企業の代表は、ルネサスエレクトロニクスだが、その株価は、今年になってから傾向的に上昇しているとは言えない。

日本の半導体産業、世界と何が違うのか

このように、日本の半導体企業の株価は、全体としてみれば、顕著な上昇とはとても言えない。それは、日本の半導体産業は、世界の最先端半導体産業とは大きく違うからだ。

ルネサスエレクトロニクスの主力製品は、自動車積載用半導体であり、AIに関係する半導体ではない。キオクシアの製品も、メモリー半導体だ。ソニーの製品はイメージセンサーだ。つまり、日本の半導体産業は、アメリカで成長している最先端のロジック半導体企業とは異質のものなのである。これを見ても、重要なのが半導体そのものではなく、AIであることがわかる。

「日本の半導体産業は、1980年代には世界を制したが、その後衰退した」と、よく言われる。しかし、この見方は不正確だ。

1980年代においても、日本が強かったのは、DRAMというメモリー半導体だけだった。CPUと呼ばれる演算用の半導体は、アメリカのインテルが支配した。日本の技術では、歯が立たなかったのである(そのインテルを、いまNVIDIAが追い抜いたのだ)。

現在のロジック半導体は、CPUが進歩したものだ。この分野で日本が弱いという基本構造は、そのときと変わらない。その後、日本の半導体産業は、メモリーの分野においても衰退した。それは、サムスンなどの韓国企業の追い上げに負けたからだ。