韓国・中国では、新型戦闘機の複座型の開発が進められています。航空自衛隊の次期戦闘機も、複座型の開発の可能性はあるのでしょうか。その実現の可能性を見ていきます。

ポイントは「無人随伴機」?

 韓国・KAI(韓国航空宇宙産業)で開発中の新型戦闘機KF-21は、複座型(二人乗り)が2023年2月20日に初飛行しました。新型戦闘機において複座型は、シミュレーターの発達や開発費を抑制するため、つくられなくなるとする声も一時はありましたが、中国のステルス戦闘機J-20も複座型が製造されるなど、現状はその逆です。では、現在開発が本格化している航空自衛隊の次期戦闘機も、複座型の開発の可能性はあるのでしょうか。

 当初、複座戦闘機はおもに、パイロットが機種を乗り換える訓練用につくられてきました。その後、戦闘機に索敵レーダーが載せられるようになると、米軍のF-14などのように後席の乗員が火器管制も含めた操作を務めるようになりました。

 開発費は単座のみの方が安くつくうえ、後席があれば機体重量は増えます。反面、電子機器が発達しても、後席に専従の火器管制担当者がいれば対地用の精密誘導兵器などは使いやすくなります。F-15E戦闘攻撃機や、並列の座席配置ながらロシアのSu-34がこれにあたります。

 こうしたものの延長上に、現在研究が進められている戦闘機に随伴する無人機の管制が挙げられます。先述したKF-21、J-20の複座も、随伴無人機の管制に用いるとされています。

 かつて、複座が見送られた米国のステルス戦闘機F-22の時代は、まだ随伴無人機の活用は現実味を帯びていませんでした。しかし、KF-21 とJ-20が今後使われる数十年の間に、随伴無人機が実用化すると中国と韓国は考えているのでしょう。

 こうした面から見ると、次期戦闘機も随伴無人機の運用を視野に入れているため、複座型はつくられる可能性は大いに考えられるところです。空自が保有できる戦闘機には、上限が定められています。その限られた機数で大きな成果を上げるため、より性能の上がった対地攻撃兵器を配備後の将来に加えるには、専従の操作員が後席で操作する複座の方がパイロットは操縦に専念できるでしょう。

「複座型」開発されない場合、どのような背景が?

 次期戦闘機を日本と共同開発する英・伊は、現在配備する「タイフーン(ユーロファイター)」と同じように、後継の「テンペスト」にも高い対地攻撃力を望むでしょう。空自が同調し、かつ高い計算力を持つAI(人工知能)を搭載可能としつつ、人間の持つ柔軟性も加えたいとするなら、複座型の開発を要求するかもしれません。

 反面、次期戦闘機では開発費の抑制を優先し、複座型は開発をしないという選択肢も、もちろん残っています。すでに伊国防相は2022年12月、「技術や研究、その後の結果」について日英伊の扱いを3等分にするように主張しています。日・英・伊のいずれかが予算的に複座型を求めなければ、議論の結果、登場しない可能性もあります。

 もう一つ、2022年暮れに決まった安保3文書の改訂で打ち出された無人機の活用も、複座型の次期戦闘機が誕生するのかどうかの判断要因と予想されます。安保3文書により無人機の積極導入に日本が舵を切ったなか、索敵と監視がおもな役目とされる随伴無人機、ならびに空自が今後導入する他の種類の無人機が、もし複座型の後席乗員が担う役目を満たし、随伴無人機が後席の管制まで必要としなければ、複座型を開発する見込みは低くなるでしょう。

 これまで空自では、F-2戦闘機に複座型が存在し、F-1戦闘機もジェット練習機のT-2が複座の役目を果たしました。それに続く次期戦闘機は、今後どのような派生をしていくのかにも注目したいところです。