小田急が神奈川県伊勢原市に計画している新総合車両所の概要が明らかになりました。移転する理由や施設計画、スケジュールなどが明らかになっています。どれくらいの規模なのでしょうか。

大野総合車両所は10両編成に非対応

 小田急と伊勢原市は2023年4月、神奈川県伊勢原市に計画している総合車両所整備に関する環境影響予測評価実施計画書を公表し、詳細なスケジュールや施設計画などについて公表。移転理由も明らかになりました。

 現在小田急線の車両検査を行っている大野総合車両所(相模原市)は、1962年10月に開設されています。車両の主要部分を取り外し、細部まで分解して点検・検査を行うことができる小田急唯一の重要な施設ですが、約60年が経過しており、早期の更新が必要な状況です。
 
 さらに大野総合車両所は設立当時に多数を占めていた4両編成の検査・整備を前提としており、現在主力となっている10両編成には対応していません。そのため、車両の検修を行う際は編成を分割したり、一部を野外で実施する必要があるといいます。
 
 小田急では現地建て替えも検討しましたが、敷地内に余剰地がなく、設備を稼働させながら段階的に更新工事を行うことが難しいため、移転整備を決定したという経緯があります。

 新総合車両所の整備をめぐっては、神奈川県伊勢原市と小田急電鉄が2023年3月8日、「持続可能なまちづくりを推進する連携協定」を締結。この協定は、伊勢原市が推進している「都市計画道路田中笠窪線整備事業」と小田急が進める新総合車両所の建設の実現に向けて連携するものとなります。また、駅間が3.7km離れている伊勢原〜鶴巻温泉間で新駅の実現にも取り組んでいくとしています。
 
 計画書を見ると、総合車両所の面積は約17万4000平方メートルと比較的大規模なものになります。そのうち総合車両所や線路、付属設備棟、変電所などの鉄道関連施設は約9万6000平方メートル。これ以外に、緑地や調整池、構内通路なども設ける計画です。総合車両所として整備する範囲は、洪水時の水没を避けるため、付近を流れる鈴川の既設橋梁と同程度の高さまで盛土造成するとしています。
 
 今後は2027年度から農業用排水路、下水・道路付け替えといった機能補償工事、2028年度から盛土・擁壁・基礎工事、2030年度から車両所工事に着手。2032年度に竣工し、2033年度からの操業開始を目指す方針です。