神奈川の海沿いを通る自動車専用道「西湘バイパス」には、ICなどを記した路線図にない謎の“出入口”が存在。その入口は加速車線がなく、一時停止してから直角に曲がって一気に自動車専用道へ入るというアクロバティックなものです。

西湘バイパスの不思議な出入口とは

 神奈川県西部、大磯町と小田原市を海沿いに結ぶ国道1号「西湘バイパス」は、無料区間と有料区間にわかれた自動車専用道です。路線図には、大磯東ICから箱根口IC、石橋IC(石橋支線)まで計12のICが書かれています。

 実はそうした路線図に書かれない“出入口”も西湘バイパスに存在。しかも、ちょっと特殊な構造になっています。

 その出入口は上り線(山側)にのみ通じており、出口は減速車線がありますが、入口は“ほぼ直角”に本線へ接続しています。合流前に一時停止があり、そこからクルマの来ないタイミングを見計らって、一気に加速して合流しなければなりません。この区間の本線は制限速度70km/hですが、多くのクルマはもっと速いスピードで流れています。

 ここには、山側に並走する国道1号の大磯中学校前交差点を曲がって、200m弱進むとたどり着きます。中学校や民家の脇を通る生活道路の趣きで、その先に自動車専用道があるとは想像できない雰囲気です。実際、国道1号の案内標識でこの道は、「西湘バイパス」方面とは書かれず、単に「江ノ島」方面と書かれています(西湘バイパス上りはそのまま国道134号に接続し江ノ島方面へ通じる)。

「ここは『大磯東“出入口”』と呼んでいます」。こう話すのは西湘バイパス無料区間を管理する国土交通省 横浜国道事務所の担当者です。

 西湘バイパスのICは起点側から大磯東IC、大磯港IC、大磯西IC……となっていますが、この出入口は大磯港IC〜大磯西IC間にあります。上り本線には「大磯東出口」として案内標識も立っているものの、終点の“大磯東IC”は別にあるという、ちょっとややこしい状況です。

出口は“直角”じゃなくなっていた

 この大磯東出入口は1966(昭和41)年頃、西湘バイパスが最初に大磯東IC〜大磯西IC間で開通した当時からあるものだそうです。大磯東出入口のうち出口は2011(平成23)年に改良されたものの、“直角”の入口については開通当初のままだそう。

 もうひとつ、有料区間の酒匂ICも、直角というほどではないものの本線合流前の一時停止があり、加速車線がない入口です。こちらも自動車専用道に指定される以前の1967(昭和42)年、酒匂IC〜小田原IC間の部分開通時にできた上り線の入口のみのICで、非常に古い構造の入口といえます。

 ちなみに、西湘バイパスと接続する小田原厚木道路も1969(昭和44)年と同時期に開通しており、なかでも二宮ICは、加速・減速車線がほとんどない昔ながらの構造となっています(合流前の一時停止はなし)。両路線とも開通から半世紀の間に様々な改良が行われましたが、加速車線がほぼない“酷な合流”は、開通当初の姿を今に伝えているともいえます。