車線数が多いものの、1車線の幅がやけに狭い――そのような印象の幹線道路が東京都内には多く見られます。一部では、車線をはみ出して走行せざるを得ないケースも。そうした車線構成の見直しも進んでいます。

その幅で片側3車線、4車線はちょっとムリじゃ…

 一般的に交通量が多い道路は、車線数も多くなるもの。しかし東京の場合、その車線の幅が妙に狭く見える箇所が多々あります。
 
 たとえば、環七通りには片側2車線と3車線の区間があり、3車線の区間は左側の車線が狭く見えるためか、比較的空いている傾向です。目黒通りも片側2車線と3車線のところがありますが、山手通りや環七通りといった主要道路の交差点で4車線に広がるところの左折レーンは明らかに狭く、バスなどは車線をはみ出して走行せざるを得ません。

 同様の例で、中央分離帯がないケースは特に危険も感じます。その代表例として、井の頭通りの杉並区から武蔵野市にかけての区間が挙げられます。

 ほぼ全区間、きれいに片側2車線ずつの構成ですが、左側は狭く見えるうえ、右側車線も中央分離帯がないため、対向車とぶつかりそうになることも。そのためクルマが左側車線にはみ出しがちで、なおさら左側車線が使われない状況になっています。

 東京都建設局によると、この井の頭通りの車線は幅2.5m×4車線だそう。1車線の幅としては標準的ということですが、左側車線は「路肩部分込み」、つまり歩道との境界にあたる側溝上のコンクリート部分(エプロン)を含めて2.5mだそうです。右側車線と比べて狭く見えるのも当然でしょう。

「道路をつくるとき、道路構造令をもとに、交通量の予測を立てながら車線数を決めます。ただ限られた道路空間のなかで配分するので、路肩部分まで使ったり、譲り合って走ったりすることが前提となっている箇所もあります」(東京都建設局)

 幅2.5mの車線は、軽自動車(全幅1480mm以下)や5ナンバー車(同1700mm以下)ならばよいかもしれませんが、いまや全幅1800mm以上、サイドミラーを含めた幅ならば2mを超える乗用車もかなり増えています。そうしたクルマの大型化も、走りにくさに拍車をかけているといえます。

狭すぎる車線やめます=「車線減」

 しかし、こうした幅の狭い車線も少しずつ見直しが進んでいます。自転車が増えてきたためです。

 都は2021年、「東京都自転車通行空間整備推進計画」を発表し、2040年代までに都道の自転車通行空間を約1800km整備する方針を掲げています。その先行整備区間のひとつとなったのが、井の頭通りの吉祥寺駅周辺区間です。

 杉並区から武蔵野市へ入り、そこから約600mのあいだは、4車線から2車線に減らされ、左側に自転車レーンが整備されました。これにより、中央分離帯を挟んで3.25mの車線+1.75mの自転車レーンに構成が再編されています。

 吉祥寺駅は都内でも自転車の乗り入れが多い駅のひとつで、井の頭通りでは年間30件程度の事故が起きていたそう。ここは安全性に問題がある一方、車道を4車線から2車線に減らしても交通状況への影響がなく、自転車通行空間の整備が「現時点で実施が可能な箇所」という理由から選ばれたところでした。

 市街化された都内の道路は、道路全体を部分的に拡幅することには困難をともないます。都は既存の道路についても、こうした道路空間の再編により自転車通行空間の確保について検討するとしています。