救急車の車体前面に書かれた「救急」の文字が、まるで鏡に映したような形態で書かれていることがあります。読みにくいことこの上ないですが、どういった理由からでしょうか。

バスやトラックでは逆文字列を見かける

 救急車を正面から見ると、「救急」の文字が鏡文字となっている場合があります。なぜでしょうか。

 似たような例として、文字の並び順を入れ替えたケースは街なかでしばしば見かけます。例えば東急バスや立川バスの車体には、進行方向右側に「スバ急東」「スバ川立」と書かれています。物流大手「福山通運」のトラックも同様で、右側面は「運通山福」という文字の配置です。

 これらは、すれ違う対向車のドライバーにとって、むしろ読みやすくするための工夫です。車体装飾に携わる人に聞くと、進行方向に向かってテロップの如く“文字が流れる”ようにしているのだそう。他方、車両の前進方向へ、左右側面で文字列の“頭をそろえる”意味もあるのだとか。

 ただ、停車中は読みにくいということもあり、通常の文字配置に改める事業者もあります。特に電話番号やアルファベットなどは“前流し”にすると、どうしてもおかしくなってしまいます。例えば乳製品を製造・販売するスジャータめいらくグループの配送用トラックには、前流しの「ターャジス」と書かれていましたが、この表記は数を減らしているようです。

 さて救急車に話を戻すと、鏡文字である以上、前流しとは異なります。しかしこれも、クルマを運転するほかのドライバーから見て、読みやすくするための工夫です。

 鏡文字は、鏡に写った際に正しい文字として認識できるようになっていますが、その鏡とは救急車の前を走るクルマのもの。緊急車両である救急車にいち早く気づいてもらうため、ルームミラーやサイドミラーに写っても認識できるようになっています。