病歴もなく元気だった主に1歳未満の乳児が、眠っている間に予兆なく突然死亡してしまう乳幼児突然死症候群、SIDS(シッズ)。政府の最新のデータによれば2022年には47人が亡くなっています。

実はこの病気、原因はわかっていませんが、発症リスクを減らすポイントは研究データから分かっています。

【SIDSの発症率を低くするポイント】
・1歳になるまでは、あおむけに寝かせる
・できるだけ母乳で育てる
・禁煙する

このうち禁煙は、副流煙を防ぐため妊娠中、出産後ともに、母親だけでなく周りの人も含まれます。

SIDSをめぐっては2023年12月、東京都世田谷区にある認可外の保育施設で、生後4カ月の男児が、SIDSで死亡しました。男児はうつ伏せで寝ていたとみられています。

これを受けて、こども家庭庁は2024年2月、都道府県や自治体に対して、保育施設などで安全対策を徹底するよう通知を出しました。

【こども家庭庁の通知】
・医師からうつぶせを勧められている場合以外は、乳児の顔が見えるよう、仰向けに寝かせる
・安全な睡眠環境を整える

通知から3カ月、実際の保育現場を取材しました。

うつぶせ状態を警告音とポップアップでIoTがお知らせ

うつ伏せが1分続くと警報で知らせる

名古屋市緑区の保育園、ヒルズウォーク徳重園。0歳から2歳までの14人を預かっています。

正午から午後2時半までは午睡=お昼寝の時間。みんなスヤスヤ眠っています。すると…保育士が園児に近づき、顔に手をかざしました。

一体、何をしているのでしょうか?

保育士:
「子どもがうつぶせじゃないかという確認する事や、呼吸をしているかを1人ずつそばに寄って確認しています」

これは午睡チェックと呼ばれ、SIDSや窒息死を防ぐために行われる、姿勢や呼吸の確認です。ヒルズウォーク徳重園では、2歳児は15分置き、1歳児は10分置き、0歳児は5分置きに、保育士が確認しています。

寝ている園児をよく見ると、首元に何かついています。これは…

ヒルズウォーク徳重園 本田香織園長:
「子どもに取り付けることで、どの寝姿勢で寝ているのかが分かるセンサーになっています」

このセンサーは午睡チェックの精度を高めようと、4月に0歳児に対して導入しました。睡眠中の乳児の姿勢や脈拍、皮膚温度などを計測。インターネットを通じスマートホンやタブレットのアプリにリアルタイムで表示します。

姿勢を表すのはこの矢印。下向きだと、うつぶせです。うつぶせが1分間続くと…

警告音が鳴り、「うつぶせになっています」と文字でも知らせてくれます。これまで0歳児に対して5分おきに行っていた目視での確認と、さまざまなものをインターネットでつなげて活用するIoTでのダブルチェックにより、SIDSのリスクを減らそうというわけです。

ヒルズウォーク徳重園 本田香織園長:
「今までも保育士の目でしっかり見ていたが、(保育士とIoTの)2つの目で見るということで、保護者の安心感にもつながったと思う」

人手不足の保育現場をIoTで効率化

保育士の有効求人倍率 深刻な人手不足

さらにこのシステム、計測したデータを設定した時間間隔で自動的にアプリに記録します。実は午睡チェックで確認した睡眠中の園児の姿勢や呼吸の状態などは、きめ細かく記録しなければなりません。ヒルズウォーク徳重園ではシステム導入までは、保育士が手書きで行っていました。

ただ、保育士の全国の有効求人倍率を見ると、2024年1月時点で3.54倍とこの2年間だけでも0.62ポイント上昇。すべての職種の平均倍率より2ポイント以上、上回っています。愛知県は全国よりさらに高い4.38倍。深刻な人手不足の中、記録作業は現場にとって大きな負担でした。

ヒルズウォーク徳重園 本田香織園長:
「(これまでは保育士が)紙面に1つ1つ手書きで書かなければいけない、チェックした時に誰がチェックしたのか、名前も1つ1つ書かなければいけないという手間もありましたので、その手間も省けて別の事務的な作業に取りかかる時間も作れたと思う」

午睡チェックシステムを開発した企業は…

イクコ 柳瀬陽一社長:
「保育業界はまだまだIoTが普及していない業界だと思っています。人の目でチェックする事はIoTを使う、使わないに必ず、必要だと思う。ただ、IoTを使う事で必ず精度が上がるし、業務効率も上がる。IoT技術を使ってもらえる業界になってほしい」