静岡・熱海土石流をきっかけに、その実態が明らかになった違法な盛り土を、宇宙から監視しようという取り組みが始まっています。県が人工衛星を活用して行っているものですが、その狙いとは?

この日、県庁を出発したのは違法な盛り土をパトロールする“監視機動班”のメンバーです。

(県“監視機動班” 中村 直樹さん)

「県東部の市に行こうと思っているが、私たちが把握している不適切盛り土があって、その監視・パトロールに行きます」

向かったのは富士山のふもとに造成されている“違法盛り土のゲンバ”。到着するとメンバーの背丈を大きく超える土砂が積み上げられていました。条例に違反しているため盛り土を造成した県東部の業者が是正しているといいますが…。

(“監視機動班”)

「草生えている上に盛ったんじゃないの?」「盛っている気がする」「高くなっている気がするんだよね」

違法な造成が発覚して2年ほどたちますが、土砂が多く撤去されている様子は見られないといいます。そもそも、なぜ違法な盛り土が造成されたのでしょうか?

(県“監視機動班” 中村 直樹さん)

「盛り土を入れた業者が土地所有者に『安く土を入れてあげるよ』と言って土地所有者も『使いやすい土地になるならいいよ』と軽く了承してしまったみたいで、土を入れられてしばらくして来てみたら、すごい高い盛り土になってしまった現場で」「コンクリートガラとかがあるので、建設残土を持ち込んだのかなというのはありますけど」

監視機動班のメンバーは建設工事で出た“残土”が運び込まれたとみています。

建設残土が持ち込まれたとみられる違法な盛り土の実態が明らかになったきっかけが、2021年に起きた熱海土石流。規制以上に積み上げられた盛り土が崩落し、災害関連死を含めて28人が犠牲となりました。

土石流をうけた県の調査で、違法な盛り土は県内に約160か所造成されていることが明らかに…。首都圏から建設残土が運び込まれることが多い東部に8割が集中しています。

県は2022年、違法な盛り土の対応にあたる部署を新設。パトロールを行う監視機動班のほか、県の盛り土規制条例に対応する対策班と盛り土規制法に対応する規制班の3つの班に分かれています。計17人の職員が対応にあたっていますが、「マンパワーに限界がある」と打ち明けます。

(県“監視機動班” 木村 葵さん)

「いかに効率的に不適切な盛り土を特定していくかということについては、いくら人手があっても足りない中で、今の人数でもいっぱいいっぱいの状態なので…」

そこで県が4月から県内全域で始めたのが、宇宙から違法な盛り土を監視する取り組みです。人工衛星が撮影した画像を使うこのシステム。これは富士山のふもとにある盛り土の画像です。3年前には何もなかった場所に2023年、盛り土が造成されているのがわかります。

県は昨年度、富士山のふもとを撮影した画像を購入し土地の形状が変わった場所をAIで抽出。県や市町が把握している情報と照らし合わせ無許可で造成されていた場合は現地調査した結果、新たに違法な盛り土が見つかったこともあったといいます。

(県“監視機動班” 木村 葵さん)

「森林部だと人の目が届かない部分もあって、発見が遅くなってしまう。気づいたときには盛り土が多くされてしまっているという状況があるので」「盛り土がされている箇所もあり、市町に問い合わせてみたら、そもそも盛り土するところではなかったのに結果的に造成されていたという事実が見つかりました」

“抑止効果”が高まることが期待される宇宙からの監視。一方で、すでに造成された“違法な盛り土”を根絶させるには大きな課題が残っているといいます。

(県“監視機動班” 中村 直樹さん)

「是正させるにしても搬出先を事業者が確保しなければいけないので、搬出先の確保、土を運ぶ費用も捻出しないといけないので、事業者によっては費用がないので、是正になかなか応じてくれない業者もいて難しさも感じています」