(指令室)

「はい。119番消防です。火災ですか。救急ですか」

けが人や急病人が発生した時や火事や災害・事故などもしもの緊急事態に行う119番通報。これまでは電話による「音声」だけが頼りでしたが緊急事態でパニックとなりうまく状況を伝えられないことも…。今、そんな119番通報に大きな変化が。

(指令室)

「あなたが使っているスマートフォンで映像を撮影していただき、映像撮影の協力をしていただきたいのですが」

リアルタイムで映像のやり取りができるスマートフォンが普及したことで、これを活用した新しい119番のカタチである「映像通報システム」の導入が静岡県内各地で進められています。

4月から東部で初めて運用を開始したのが、年間2万5000件の通報を受ける富士市・富士宮市消防指令センター。その仕組みとは…。まずはスマホからこれまで通り、電話で119番通報をします。そのうえで、指令員が現場の様子を映像で詳しく確認したいという場合に、消防から送られてきたアドレスを開くことで、映像が消防に送られる仕組みになっています。

(富士市・富士宮市消防指令センター 藤坂 一輝 センター長)

「期待する部分はいただいた映像を出動隊に送れるので、現場 到着前に作戦を立てられる」「現場到着した時にどう活動を開始するか、迅速な判断ができることを期待している」

このシステムは、消防が現場の様子を確認するだけでなく、何をすればいいかパニックになっている通報者に消防から映像を使って指示することもできるのです。

こちらも4月から映像通報システムを導入した浜松市消防指令センター。例えば、意識も呼吸もない人への対応がわからない場合でも…。

(指令室)

「今から胸骨圧迫のやり方をそちらに送りますので、同じようにやっていただけますか?」

(通報者)

「わかりました」「見てます」

(浜松市消防指令センター)

「救急車が到着するまで胸骨圧迫をしていてください」

(通報者)

「はい」

通話だけでは伝わりにくい指示も、このシステムを使い映像で伝えることで的確な指示を素早く行うことができ、初期対応を行うことで命を救える可能性が高まるといいます。

(消防局 情報指令課 石原 徹也 課長)

「今までは音声で中々把握しきれないところがあったが、映像で状況把握という意味では各段に技術が上がって期待している」「心肺蘇生法のやり方や地理不案内の方の把握、大規模災害時の状況把握は瞬時に映像から得ていきたい」

一方、毎年 多くの登山客でにぎわう富士山などを抱える富士宮市にとって、このシステムの導入は大きなメリットがあるといいます。

(富士市・富士宮市消防指令センター 藤坂 一輝 センター長)

「富士宮市では富士山もありレジャーにかかわる通報も多い。来訪者が県外から多いため地理が不得意な部分がある。そういう時にLive119を使うことで位置情報を取得でき、傷病者の状態も映像で把握できるので有効だと思う」

2022年11月から実証実験を始め、実際に山での遭難救助にも使われましたが、そのメリットは出動する隊員も感じているといいます。

(富士市・富士宮市消防指令センター 宇津木 元紀 主査)

「実証実験の段階でも、富士山の遭難者の位置情報の取得や火災、救助の現場の模様を隊員たちに共有することによってイメージしやすいという声があるので」「隊員たちも災害現場や救助活動の方針が瞬時にできるといったメリットの声を多く聞いている」

一刻を争う現場で、大きな効果が期待される映像通報システム。今後、積極的に活用して、1人でも多くの人の命が救われることが望まれます。