常識や技術的限界など、すべてを突破して新たな道を切り拓くべく挑戦する――。
そんな既存概念にとらわれない規格外のプロジェクトリーダーや起業家、研究者など、“本物の開拓者”の熱い思いや人間像に迫る、新たなスタイルの経済番組「日経スペシャル ブレイクスルー〜不屈なる開拓者〜」(毎週土曜午前10時30分放送)。

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「テレ東プラス」は、番組MCを務める小説家・真山仁と進行役の佐々木明子キャスター、吉田広プロデューサーを取材した。

もう一度、日本がブレイクスルーするヒントに


未来に向かって走り続ける開拓者のあくなき情熱や動向を伝える「日経スペシャル ブレイクスルー〜不屈なる開拓者〜」。大人気経済小説「ハゲタカ」シリーズなどで知られ、執筆前には綿密に取材を行うことで知られる真山仁は、開口一番、新番組にかける熱い思いを口にした。

「さまざまな人や企業、社会現象を取材していて感じるのは“日本は元気をなくしてしまったんじゃないか”ということです。とりわけ若い人たちの元気がない。『挑戦する勇気がない』、『挑戦の仕方がわからない』と言う若者が増えている。失敗をネガティブにとらえて、大切なのは結果だけだと思い込んでいる。テレビなどでも、注目されるのは、いつも成功者。“なぜ成功できたか?”と成功の理由を探す番組ばかりの状況に疑問を感じていました」。

今の日本に必要なのは、“チャレンジすること”だと真山は語る。

「結果ではなく、挑む姿こそが、もう一度、日本がブレイクスルーするヒントになるのではないか。挑戦そのものにフォーカスを当てたいと、番組を始める時に伝えました」。

情熱にフォーカスする番組があってもいい


「今回の番組は、大企業、スタートアップ企業、大学などの研究室で、未来に向けて世の中を変える研究、開発を進めている開拓者を紹介したいと思い、企画しました。成功して過去を振り返るのではなく、今まさに挑戦中のパッションあふれる皆さん。その情熱にフォーカスする番組があってもいいのではないかと」(吉田プロデューサー)。

真山をMCに迎えた理由は、かつて吉田プロデューサーがディレクターを務めていた『日経スペシャル 未来世紀ジパング』(2011〜2019年)にさかのぼる。ゲストに真山を招いた際、その取材力と幅広い知識に感服したという。

「最も未来志向で骨太の番組を作りたい。そう考えた時に、小説を通じて現代の課題や挑戦を描き続けている真山さんが最適だと。報道記者とは違う目線でロケや取材を行い、小説家ならではの言葉で語ってもらう…そうすることで、主人公である開拓者、挑戦者の思いがさらにあぶり出されていくのではないか」(吉田プロデューサー)。

これを受けた真山は、「社会を変えるための選択肢を増やしたいという気持ちで、小説を書き続けています。小説が広く読まれて世の中が変わっていく実感があれば、黙々と小説を書き続ければいい。しかし、『小説家であることを理由に逃げていないか』という声を、ある時、いただいた。そんな中で今回のお話があり、“リスクはあるかもしれないが、挑んでみよう”と決意した。
一番知りたいのは、“開拓者たちはなぜ戦うのか?”。すでに取材を始めていますが、心の中を丸裸にするような取材をリアルにお見せしたい」と、番組出演を快諾した理由と手応えを口にした。

現場にこそ、真実があると思っています


3月をもってメインキャスターを務めていた「ワールドビジネスサテライト(WBS)」を卒業。4月から「ブレイクスルー」で進行役を務める佐々木キャスターは、「真山さんが切り込みやすい環境を作ることが、私の役目だと考えています。真山さんが切り込んでいく中で、スタッフの思いも拾いながら、チームとして一つの番組を作っていきたい」と意気込みを。

その言葉どおり、佐々木キャスターもまた、各方面で挑戦を続ける企業や研究室を精力的に取材している。

「もともと、スタジオよりも現場に行く方が好きでした。かつてはスポーツを担当しておりましたので、現場にこそ真実があると思っていましたし、常々現場に行きたいと訴えてきました。私にとってもブレイクスルーなタイミング。報道局に来たばかりの頃、『ハゲタカ』を読んで政財界の実態を学ばせていただきました。スタートを開いてくださった真山さんと次のステージでご一緒できる…こんなに幸せなことはありません」(佐々木キャスター)。

「ブレイクスルー」には、ほとんど台本がない


「未来世紀ジパング」にゲスト出演した際、「“こんなに真面目に国際問題に向き合っているのか”と、正直驚いた。こういう問題にお金と時間をかけて形にするのはNHKしかないと思っていたが、テレビ東京がやっている」とコメントしていた真山。“テレ東ならでは”の番組作りにも期待を寄せる。

「『ブレイクスルー』には、ほとんど台本がありません。あっても『無視していい?』と聞くと『お好きにどうぞ』と言ってくれる。会社やその人が実現したことの紹介も大切ですが、そのうち『情熱だけにフォーカスしよう』と言い出すと思う(笑)。それが“テレ東らしさ”なのかはわかりませんが、私は、小説を書く時にも常に期待を裏切りたい、型にはまりたくないという思いがありますので、好きにやらせてもらえるのはありがたいです」。

「少数精鋭なので、みんな大変な思いをしながら現場に情熱を注ぎ、その現場で元気をもらってまた奮起する…それがテレビ東京の良さかもしれません。『ブレイクスルー』も、そうした“テレ東ならではの良さ”が出せるのではないかと思います」と、佐々木キャスター。予算も人員も潤沢ではないが、根底には、情熱と温もりがあると伝える姿が印象的だった。

エールを送る、じっと見つめる番組にしたい


“開拓者”と呼ばれる人は「どこか普通じゃないところがある」。「そういう開拓者の人物像を、多方面から深く掘り下げていきたい」と、最後に展望を語った真山。

「小説では、現実にはあり得ないような人を登場させたくなることがありますが、リアルな世界にも想像を超えてくる人がたくさんいる。番組が目指す結論は何かと言えば、何でもあり。“こんなとんでもない人がいるのか”という驚きもあれば、逆に、うまくいかなくて残念なケースもある。誰もやったことがないことに挑戦するのだから、みんなが成功するわけではない。
なぜ無理だったのかを、視聴者の皆さんと一緒に考えたりもしたい。寄り添うのではなく、じっと見つめる。時には叱ることもあるかもしれませんが(笑)、常にエールを送り続ける。そういう番組にしていきたいと思います」

新番組「日経スペシャル ブレイクスルー〜不屈なる開拓者〜」。真山による忖度のない取材、開拓者たちが挑戦する姿に刮目したい。

(取材・文/橋本達典)

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【真山仁 プロフィール】
大阪府出身。1987年に同志社大学法学部政治学科を卒業。中部読売新聞(のち読売新聞中部支社)入社。1989年に同社を退職後、フリーライターを経て、2004年、「ハゲタカ」(ダイヤモンド社/講談社文庫)でデビュー。著書多数。近著に「ブレイク」(KADOKAWA)、「ロッキード」(文藝春秋)、「疑う力」(文春新書)など出版。

【佐々木明子キャスター プロフィール】
東京都出身。1992年、テレビ東京に入社。スポーツやバラエティーを担当後、2001年に夕方ニュースのキャスターに就任。2006年にニューヨーク支局に異動し、リーマン・ショックに揺れるアメリカ経済をリポートした。2014年から「Newsモーニングサテライト」メインキャスター、2021年から2023年3月まで、「WBS」のメインキャスターを務めた。