散らかった部屋を片付けようと思った矢先、次から次へと「やらなきゃいけないこと」が目についてしまい、結局何も出来なかったという経験は多くの人が共感できるのではないだろうか。井上まい(@omo_mai)さんの漫画「大丈夫倶楽部」は、主人公・花田もねが日常生活において「大丈夫になる」ため奮闘する姿が描かれ、読者からも「ちょっと大丈夫じゃないときに読むと救われる」といったコメントが寄せられている。本作について、作者の井上まいさんに話を聞いた。


■「共感してしまう人たちに向けて『でも仕方ないし別にいいんですよ』と言ってしまいたい」

「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせる“花田さん”の姿が印象的な本作。おまじないのようなこの言葉をテーマとしたことについて、井上さんは「大丈夫になりたい、ほっとしたい願望を実際に長く持て余す時期が自分にもあり、ふとそれを作品に翻案して形にできそうと思えたからです。個人的には、言い聞かせるというより願って目指すようなイメージです」と、自身の経験がきっかけとなったことを告白。

花田さんの友人・芦川さんの姿形もインパクト十分だが、「読んで感じていただいた通りで構わないのですが、他人はみんな正体不明で、人でも人じゃなくてもわからないというニュアンスが伝わっていればうれしいです」とのこと。その存在は読者の想像力に委ねられているようだ。

「大丈夫じゃなくなってしまう」状況に多くの読者が共感を示しているが、「逆に、共感してしまう人たちに向けて『でも仕方ないし別にいいんですよ』と言ってしまいたい。押し付けない力の入れ具合で心の角を丸くしたい気持ちでいます。

作品はあくまで可能性の提示で、大丈夫になったならそれはその方の自力によるものですし、読んで落ち込んでも、期待通りにならなくても、一つの読書体験になれたらと思います」と、自身の思いを明かしてくれた。

最後に、井上さんは「このインタビューで答えたような心持ちで、最後まで描き続けたいと思っています。漫画は娯楽ですので、この作品に興味を持っていただいた方に好きに楽しんでもらえれば本望です」と、読者へメッセージを寄せた。



取材協力:井上まい(@omo_mai)