海外を旅するなら、そこでしか得られない体験や光景を求めるもの。けれど、いつでも劇的なエピソード、うれしいことばかりに出くわすわけではもちろんないもので……。

漫画家の五箇野人(@gokayajin)さんは、ゲッサン(小学館)で連載中の「海外 縁にまかせて歩くだけ。」や、「つかれたときに読む海外旅日記」など、海外で体験した出来事を作品に描く作家。2024年5月10日には単行本「つかれたときに読む海外旅日記」5巻と「海外 縁にまかせて歩くだけ。」2巻が同時発売されるほか、SNSやブログでも日々海外旅のエピソードを漫画として発表し人気を博している。

そんな五箇野人さんが2024年から、ネット上で公開を始めた新シリーズが「そんな日もある。」だ。五箇野人さんならではの視点や思いがけない体験を描く海外旅日記シリーズとは対照的に、「そんな日もある。」シリーズでは、会計をしたいのにレジの店員が長電話でほったらかしにされたり、宿泊者同士の距離が近いドミトリーで自分だけ蚊帳の外に置かれてしまったりと、がっかり・しょんぼりしてしまうような小さな出来事を淡々と描いている。タイトルどおり「そんな日もあるよ」と言いたくなるような同シリーズをスタートした想いを、作者の五箇野人さんに訊いた。

■「怒、哀」をあえて描こうとした新シリーズ
――今年1月にスタートした「そんな日もある。」シリーズですが、新たに立ち上げた想いを教えてください。

【五箇野人】今までの旅日記では喜怒哀楽でいうと「喜、楽」をずっと描いてきたので、「怒り」「哀しみ」というと大げさですが、「怒、哀」を描けないかなと以前から考えていて、今回のような形に落ち着きました。

――蚊帳の外に置かれてしまったり、運悪く並び直しになってしまったり、まさに「そんな日もある」と言いたくなるエアポケットのような体験が描かれています。海外旅日記などの作品と制作の違いや、難しいポイントがあれば教えてください。

【五箇野人】軽いエピソードですが一応バッドエンドなシリーズですので、優しい雰囲気のカラーにして暗くなりすぎないようにしつつ、1ページにコマとセリフを詰め込む旅日記とは対照的に、なるべく少ないセリフで描きたいなと意識して進めています。いろんな面で旅日記の逆に振れたらなぁと考えています。

――一方、関連写真がブログに掲載されているように、ちょっと貧乏くじを引いたようなエピソードでもくすっと笑える柔らかな雰囲気を本シリーズには感じます。読者にはどんな風に同作を楽しんでほしいですか?

【五箇野人】「世の中の理不尽を『そんな日もあるかぁ』と笑ってしまう」というのが、お届けしたい軸のメッセージではあります。

日本での暮らしの中でもいろんな考えや習慣の人がいるので、読者さんも生活の中でネガティブな感情になるときもあると思いますが、このマンガを通していい意味で気楽になれるお手伝いができたらなぁと思っています。

取材協力:五箇野人(@gokayajin)