ギャップや意外性はおもしろさの源のひとつ。それは作品の中だけに留まらず、作家自身の作風の振れ幅でも感じられるものだ。漫画家の赤信号わたる(@GoAkashin)さんは 「ヤンキー悪役令嬢 転生天下唯我独尊」(ヴァルキリーコミックス)や、「全てを筋肉で解決する童話」(双葉社、2024年3月21日発売)など、ハイテンションなコメディ作品を多く描く漫画家。そんな赤信号さんが「いつもと全然違う作風」として描いた創作漫画が、「ナマケモノはなまけてない」だ。

同作は、建設現場で働くナマケモノを主人公にした短編作品。動きがゆっくりなナマケモノはやる気はあっても仕事が遅く、同僚のライオンからは「役立たず」と罵られてしまう。そんなナマケモノは、現場で宙づりになったライオンを発見する。

周囲には誰もいない状況で助けに駆け付けたいナマケモノだが、のろのろとしか動けない自分に涙が流れ……、という物語。無料電子書籍「赤信号わたるの漫画交差点【短編集】2」に収録されている異色の同作について、作者の赤信号わたるさんに当時の制作経緯を取材した。

■「欠点も同時に短所」主人公に感情移入しながら描いた一作
――「ナマケモノはなまけてない」を描いたきっかけや、4コマ形式を取り入れた理由について教えてください。

【赤信号わたる】動物キャラたちの漫画を描いてみたいという気持ちは前からありました。ナマケモノを主人公にしようと決めたときに、そのゆっくりさを表現するなら4コマ形式が最適なのではないかと思いました。

――赤信号さんの作品の中では4コマ、動物キャラ、ローテンションと異色と言える作品です。こうした雰囲気の作品を描いたのにはどんな想いがあったのでしょうか?

【赤信号わたる】この作品を描いたのはもう随分前なのですが、いろんな作風に挑戦していた時期ですね。珍しくテーマから思いついた作品です。この作品でいうと「ゆっくり」や「遅い」といったような、欠点だと見なされやすいことも、きっと同時に長所でもあるはずだし、世の中に必要なんだと思います。それを漫画で表現できないものかと思いました。

――また、頑張っているけどゆっくりとしか動けないもどかしさや、ラストの笑顔にいたるまでの間など、ナマケモノの特徴がキャラクターとして魅力的に描かれていました。

【赤信号わたる】自分も生来ものすごく不器用な人間なので、ナマケモノに対し感情移入しながら描くことができました。自分に自信がなくなってるときに、他者から必要だと言ってもらえると最高にうれしいというのもいくつかの実体験から来てますね。だからこそ気恥ずかしさもありましたが、今作はそこから逃げたらダメだなと思いながら描いた記憶があります。

取材協力:赤信号わたる(@GoAkashin)