長い寿命を持ち、時に不老不死とも語られるファンタジーの種族「エルフ」。けれど、人間社会で生きるなら、「定年」はエルフも避けられず――?

WEB上の個人制作漫画には、プロの漫画家が手掛けたものも数多く存在する。「ヤンマガWeb」(講談社)に「ゴリせん 〜パニックもので真っ先に死ぬタイプの体育教師」(コミックス完結7巻は2024年1月18日発売)を連載していた酒井大輔(@sakai0129)さんが、自身のX上で発表した「もう少しで定年を迎える寿命数千年のエルフ」もそうした作品の1つだ。X上で2.1万件を超える「いいね」を集めた同作の舞台裏を、作者の酒井大輔さんに取材した。

■エルフであっても定年は人並み!?真のタイトルに爆笑
主人公の「シローレン」は、58歳のエルフ。人間社会に溶け込み、市役所に勤める彼女は、ひょんなことから長い寿命に関係なく60歳で定年を迎えることを知る。この先何千年と生きるのに失職の危機を迎えたシローレンは、前例主義のお役所を動かすために行動を開始する――、というストーリー。

種族間の寿命の差が現代社会にあったらというユニークな設定に引き込まれる一方、結末では本作の真のタイトル「闘争の市労連(とうそうのシローレン)」が明かされ、有名作品のパロディとわかるなど、読者からは「定年後が長すぎる」「なぜこのネタを思いついた」と多くの反響が寄せられた作品だ。

■言葉遊びのタイトルから作り上げたストーリー
――市役所で働くエルフという掴みからラストで明かされるタイトルまで笑える作品です。本作のアイデアはどんなところから生まれたのでしょうか?

【酒井大輔】言葉遊びが好きで、ムーミンのガールフレンドのフローレンが労働組合連合の「府労連」みたいだなぁと思っていて、その後、最近話題のエルフが主人公の某作品タイトルを見て「これしかない!」と思い作りました。エルフと市役所の労働組合の設定をくっつけるために無理矢理作りました。

――パロディやシャレタイトルのようなある種一発ネタを描く楽しさは、酒井さんとしてはどんなところにありますか?

【酒井大輔】たぶんダジャレを思いついたときと同じような感覚だと思います。ダジャレは口にするとオヤジギャグ扱いですが、漫画にするとわりと好印象なのでいいですね(笑)。

――先日完結した「ゴリせん」では学生たちをはじめ若いキャラクターが多く登場しましたが、本作ではシローレンがエルフなこともあり、ほかの職員たちが皆「こういう人いる!」と思えるデザインでした。現実寄りのキャラクターを描くうえでの工夫や、モデルにした方などはいますか?

【酒井大輔】会社で働いていたときのベテラン社員のイメージで描きました。

――また、背景に溶け込む標語ポスターや照会する職員のしぐさなど、細かいディティールも笑える要素になっていると思います。本作の演出や雰囲気作りで意識したポイントがあれば教えてください。

【酒井大輔】ネットでいろいろ調べて、何となくそれっぽくなるような感じにしてます。あとはやっぱり会社員だったときのイメージがありますね。

取材協力:酒井大輔(@sakai0129)