これほど登山道のバリエーションのある山はあるだろうか…。それは大分県の 「くじゅう連山」 。東西15kmの広大な山域に 百名山の「久住山」 を筆頭として 20以上もの火山 が連なります。 美しい山容 豊かな自然 、そして 初級者でも楽しめる登山コース は常にハイカーたちの憧れの地です。

この記事では、そんなくじゅう連山の 魅力 おすすめの季節 人気の登山コース をたっぷりご紹介します。

くじゅう連山とは

地理

大分県玖珠郡九重町田野(くすぐん ここのえまち たの)

阿蘇くじゅう国立公園

くじゅう連山 は、大分県と熊本県にまたがる 「阿蘇くじゅう国立公園」 に含まれています。阿蘇くじゅう国立公園は、 大分県のくじゅう連山・由布岳・鶴見岳 熊本県の阿蘇山 からなる 火山群 、高原や湿原などの 美しい草原風景 が特徴です。

https://www.env.go.jp/park/aso/

「久住」と「九重」と「くじゅう」

くじゅう連山の 主峰は「久住山」 。かつて、山麓の北側の 「九重町(ここのえまち)」 、南側の 「久住町(くじゅうまち)」 では、それぞれの地名に基づいて 「九重山」 「久住山」 との表記が用いられていました。それが双方の合意で、山域全体を指すときは 「くじゅう連山(九重連山)」 、その主峰は 「久住山」 と表記するようになりました。そして国立公園の名前には、(どちらにも偏らないように…)平仮名で 「阿蘇くじゅう国立公園」 と表記するようになったのです。ちょっぴり混乱してしまいますね。

くじゅう連山の代表的な山

くじゅう連山の 最高峰 中岳 で標高は1,791m、 九州本土の最高峰 でもあります。山群は 西の久住山系 東の大船山系 に分かれ、間には 九州唯一の高層湿原・坊ガツル が広がっています。

久住山系(西側)

  • 【日本百名山・主峰】久住山:1,787m
  • 【最高峰】中岳:1,791m
  • 星生山(ほっしょうざん):1,762m
  • 三俣山:1,745m

大船山系(東側)

  • 大船山(たいせんざん): 1,786m
  • 平治岳 (ひいじだけ):1,643m
  • 【黒岳主峰】高塚山:1,587m

Photo by photo AC

https://kujufanclub.com/overview/

https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/fukuoka/502_Kujusan/502_index.html

くじゅう連山の四季

美しい山容とともに 豊かな自然 を抱えるくじゅう連山。 四季折々の景観 を楽しむことができます。

毎年3月頃に湿原では高山植物の生息を保全するための 野焼き が行われます。その後、真っ先に顔をのぞかせるのは黄色く可憐な キスミレ 。そしてキスミレと共にくじゅうに春を告げる サクラソウ が花を咲かせます。また、山では黄金色の マンサク が山肌を輝かせます。

初夏(5月上旬〜)になると、くじゅう連山は ミヤマキリシマ ピンク一色 に染まります。ミヤマキリシマは九州の高原に自生する 国指定の天然記念物 のツツジ。特に 大船山から北大船山、平治岳にかけての大群生 が見事です。

Photo by photo AC

https://www.visit-oita.jp/topics/detail/182

9月になると、繊細な美しさを持つ シラヒゲソウ 、夜明けの空に見立てて名の付いた アケボノソウ などが咲き始め、いよいよ秋の到来です。10月半ばになれば山は赤く色付き、ゆっくりと山麓に 紅葉 が下りていく様が見られます。11月には湿原の ススキ が輝き、後は静かに冬の訪れを待つのみです。

【アケボノソウ 自然の生み出す美しさ】

Photo by photo AC

くじゅう連山では11月中旬頃に 初雪 が降ります。山群は深雪に眠り、湿原ではキツネやウサギが白い足跡を残します。くじゅうの冬は厳しく、 マイナス20度 50cmの積雪 を観測したときもあるほど。九州とは思えない極寒の世界です。

https://nonohananosato.jp/kisetsu_s.php?id=haru

くじゅう登山の魅力

四季折々の景観

ミヤマキリシマを始めとして、 四季折々の植物 と出会えるくじゅう連山。 どの季節に来ても違う顔が楽しめる ことが大きな魅力です。ただ冬は雪山登山技術が必要になりますので、 ミヤマキリシマの咲く初夏から初冠雪まで が登山適期です。

ダイナミックな景観

くじゅう連山は 火山帯 。それ故に 火山群特有の力強い景観 を楽しむことができます。本州ではなかなか見られない景色を目指して、九州だけでなく日本全国から登山者が集まります。

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美しい湿原風景

くじゅう連山には、 「ラムサール条約登録湿地」 に登録されている 坊ガツル湿原 タデ原湿原 が点在しています。 中間湿原として国内最大級の面積 を誇り、 希少な植物 の宝庫でもあります。鳥たちの姿も多く見られ、皆で守っていくべき貴重な自然です。

https://www.pref.oita.jp/soshiki/13070/ramsar.html

初級者でも歩くことができる登山道

くじゅう連山は全体的に アップダウンの少ない山群 です。最高峰は1,791mですが、主要な登山口の標高は1,000m〜1,300m。 大きな標高差、急登、急峻な岩場はなく 歩きやすい登山道で構成されています。

ただ、小さくてもアップダウンを繰り返したり、コースによっては距離も長くなるので 体力は必要 です。また、 登山用の服装と装備も必須 です。

おすすめ登山コース

ここでは、 日帰りと1泊2日の登山コース をいくつかご紹介します。1泊と言ってもテント泊ではなく、坊ガツルにある 「法華院温泉山荘」 泊なので初級者の方も挑戦しやすいですよ。

https://kujufanclub.com/

https://kujufanclub.com/kujumap.pdf

【初心者】タデ原湿原散策コース

  • 所要時間:45分
  • 距離:約2.5km
  • コース情報:木道散策

長者原(ちょうじゃばる)ビジターセンター から タデ原湿原と森の散策路を周回 するコースです。アップダウンがないので初心者でも楽しめます。タデ原湿原のみの周回も可能です。

Photo by 地理院地図

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https://www.env.go.jp/nature/nationalparks/list/aso-kuju/course/01/

【初級】坊ガツル湿原コース

  • 所要時間:5時間30分
  • 距離:約10km
  • 標高差:約500m
  • コース情報:長者原登山口→雨ヶ池越→坊ガツル→法華院温泉山荘→諏蛾守(すがもり)越→長者原登山口

長者原ビジターセンター近くの長者原登山口から 三俣山をぐるりと周る コースです。 坊ガツル を経由し 硫黄岳 噴煙 を左に眺めながらのんびりとしたトレッキングを楽しめます。

体力が不安な方は、登山口と坊ツガルを往復するだけでもくじゅうの雰囲気を十分に味わえますよ。

Photo by 地理院地図

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【秋の坊ガツルのテント場】

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【中級】久住山・中岳コース

  • 所要時間:5時間30分
  • 距離:約10km
  • 標高差:約490m
  • コース情報:牧ノ戸峠登山口→沓掛山(くつかけやま)→扇ヶ鼻分岐→久住山→御池(みいけ)→中岳→天狗ヶ城→扇ヶ鼻分岐→牧ノ戸峠登山口

くじゅう連山の 主峰と最高峰を登る贅沢なコース 。標高1,300mの牧ノ戸峠登山口からスタートし、1,791mの中岳を目指します。最初のピーク・ 沓掛山 山頂から阿蘇方面の展望を楽しんだら、いよいよ 久住山 へ。くじゅう連山の中心部である 久住山〜御池〜中岳間の歩き は、 景色 気持ち良さ もひとしお。

Photo by 地理院地図

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【中級】大船山コース

  • 所要時間:7時間
  • 距離:約13km
  • 標高差:約750m
  • コース情報:長者原登山口→雨ヶ池越→坊ガツル→段原(だんばる)→大船山→同じルートで長者原登山口へ

坊ガツルを通り大船山を往復 するこのコース。 ミヤマキリシマの咲く6月 が特におすすめです。他にも イワカガミ コケモモ の可愛い姿や、秋の リンドウ の花や 鮮やかな紅葉 を楽しむことができます。

Photo by 地理院地図

Photo by 地理院地図

【中級】くじゅう連山縦走〈1泊〉

  • 所要時間:1日目・5時間/2日目・2時間
  • 距離:1日目・約9km/2日目・約5km
  • 標高差:1日目・約490m/2日目・約-200m
  • コース情報:1日目・牧ノ戸峠登山口→沓掛山→扇ヶ鼻分岐→久住山→御池(みいけ)→中岳→天狗ヶ城→久住分れ→法華院温泉山荘/2日目・法華院温泉山荘→坊ガツル→雨ヶ池越→長者原登山口

「法華院温泉山荘」 九州最高地点の温泉 を楽しみながら くじゅう連山を縦走 するコース。ロングコースですが1泊するので安心。 初日はしっかり登山 、温泉で体の疲れを癒やしたら 2日目は湿原をのんびり散策 します。下山口の長者原登山口から入山口の牧ノ戸峠登山口は徒歩1時間ほどで行けるので、牧ノ戸峠登山口に車を止めて縦走することが可能です。

〈法華院温泉山荘〉

  • 電話番号:090-4980-2810(受付時間 8:00〜20:30)

https://www.hitou.or.jp/provider/detail?providerId=710

Photo by 地理院地図

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【御池】

Photo by photo AC

服装・装備

服装

  • Tシャツ・長袖Tシャツ(速乾性のもの)
  • 中間着(薄手のフリースなど)
  • アウター
  • ストレッチ性のあるズボン
  • 登山靴
  • 帽子(夏は日差し除け用・冬は防寒用のもの)
  • 下着、靴下は可能ならアウトドア用のもの
  • アウトドア用グローブ
  • 冬用グローブ・ネックウォーマー【冬】
  • 厚手のズボン【冬】
  • 防寒着(ダウンジャケットなど)【冬】

季節に応じて調整してください。

装備

  • ザック
  • 地図
  • コンパス
  • ヘッドライト
  • 行動食・軽食
  • 水筒(夏場は2リットル以上)
  • レインウェア
  • トレッキングポール(必要な方は)
  • その他…ビニール袋、トイレットペーパー、タオルなど
  • 軽アイゼン・ゲイター【冬】
  • 着替え【宿泊する場合】

さあ、くじゅうの山と自然を楽しもう

気になる登山ルートはありましたか?歩けば歩くほど奥の深いくじゅう連山。ぜひすべての四季を体験してみてください。


余暇プランナー:fudo2020