【ソウル聯合ニュース】日本による植民地時代の徴用被害者への賠償問題を巡り、韓国政府が日本企業の賠償支払いを政府傘下の財団に肩代わりさせる解決策を発表してから6日で1年になる。

 日本企業の資金拠出や直接の謝罪など日本側の「十分な呼応」なしに発表された解決策は、両国関係の最大の懸案だった徴用問題を韓国主導で終わらせるという決定だった。

 その結果、昨年1年間に韓日首脳が会談した回数は7回に上り、両国関係は急速に回復。韓米日3カ国協力を強化する基盤をつくった。解決策の履行にもある程度進展があったが、一方で日本の呼応不足は依然、不安要因となっている。

◇賠償金支給進むも財源不足の恐れ

 これまでに、2018年に韓国大法院(最高裁)で勝訴が確定した原告15人のうち、解決策を受け入れた11人に賠償金が支払われた。受け入れを拒否している4人については賠償金相当額を裁判所へ供託する手続きが進む。

 ただ、昨年末からは「2次訴訟」の賠償確定判決が相次いでいる。

 2次訴訟は、徴用被害者の賠償請求権を初めて認定した12年の大法院判決を受けて別の被害者らが起こした9件の訴訟。勝訴が確定した原告は計52人となっている。

 これを受け韓国政府は先月、原告側との本格的な接触を開始した。原告側の意思を確認した上で賠償金などを一括で支給する方針だ。

 賠償金を代わりに支給する「日帝強制動員被害者支援財団」の関係者はこれまで接触した原告側の意向について、全般的に「否定的ではない」と述べた。

 問題は財団の資金が限られていることだ。

 最大野党「共に民主党」の朴洪根(パク・ホングン)国会議員によると、国内外の民間から財団に寄せられた寄付金は計約41億6000万ウォン(約4億7000万円)。これには韓国鉄鋼大手ポスコの40億ウォンも含まれる。財団はこのうちおよそ25億ウォンを原告側に支給した。受け入れを拒否した原告に関しては供託金として約12億ウォンを支出する。

 残りの基金で2次訴訟の原告に賠償金と遅延利息を支払うには大きく不足する。別の徴用訴訟も続いており支給対象者はさらに増える見通しだ。

 財団側は「民間の自発的な寄与を通じて財源拡充のため努力する」としているが、具体策は説明していない。ポスコ以外に1965年の韓日請求権協定の恩恵を受けた韓国企業の参加はまだ不透明な状況だ。

◇韓国の不満・日本の不安 日本企業の参加は…

 韓国政府内外からは、解決策の安定的な推進のためには日本も誠意を見せるべきだとの声が出ている。

 徴用問題を巡る韓日の交渉で、日本政府は日本企業の賠償責任を認めるような寄付はいかなる形式であれできないとの立場を固持した。このため韓国政府はひとまず日本企業の参加がないまま解決策を打ち出したが、これら企業が自発的に財源拡充に寄与する可能性を踏まえて「誠意ある呼応」を促してきた。

 しかし、被告企業を含めて日本企業が財団に寄付する動きは確認されていない。外交筋からは「韓国の不満、日本の不安」との言葉が聞かれる。韓国は悪化の一途をたどった両国関係の回復へ主導的に努力したにもかかわらず、日本側が相応の対応をしていないとの不満を、日本は解決策の法的な側面や韓国の対日政策の持続性に不安を、それぞれ抱いているというものだ。

 今後、解決策の履行が軌道に乗れば日本企業も前向きに参加を検討するのではないかとの見方もある。

 また、韓日政府は、解決策をきっかけに急速に進んだ関係改善の流れを維持すべきとの強い共通認識を持っている。

 先月、徴用訴訟で日立造船が韓国の裁判所に預けていた供託金を原告が受け取り、一連の訴訟で日本企業の資金が初めて原告側に渡ったことに関しても、両国は事態を拡大させなかった。

 韓国の大統領室高官は今月1日、「今後の進展状況により日本側も誠意を見せることができ、これこそが力を合わせて残された宿題を解決していく過程」と強調した。