【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は29日、大統領室庁舎で最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表と会談した。尹大統領が2022年5月に就任して以来、李氏と会談するのは初めて。両氏は約2時間10分間諸懸案について議論したが、立場の違いを埋めることはできなかった。

 李代表は国会で可決した法案に尹大統領が相次いで拒否権を行使したことへの遺憾表明や水害の行方不明者を捜索中だった海兵隊兵士の殉職事件に絡んで捜査に圧力がかけられた疑惑を特別検察官に捜査させる法案とソウル・梨泰院で159人が死亡した雑踏事故を巡る特別法などの受け入れなどを要求したが、尹大統領は難色を示した。

 共に民主党の陳声準(チン・ソンジュン)政策委員会議長によると、李代表は国民1人当たり25万ウォン(約2万8000円)を支給する緊急措置の実施を迫ったが、尹大統領は編成されている小規模事業者らに対する支援予算を執行することが優先だとし、李氏の要求を事実上退けた。また、「大統領は国民生活回復の緊急措置について現予算の執行が優先であり、執行過程で与野党と政府による協議体を稼動し、どのような議論が必要なのか話し合いたいと提案した」という。与野党と政府による協議体について、大統領室の李度運(イ・ドウン)広報首席秘書官は尹大統領の提案に対して李代表が「与野党が国会という空間をまず活用するべき」との立場を示したと説明した。

 李代表は会談の冒頭で、「この機会に国政運営にとって大きな負担になっている家族らのさまざまな疑惑も整理してほしい」とも促した。大統領夫人の金建希(キム・ゴンヒ)氏が輸入車ディーラー「ドイツ・モーターズ」の株価操作事件に関与した疑惑などを特別検察官に捜査させる法案を受け入れるよう求めたものとみられる。

 共に民主党の朴省俊(パク・ソンジュン)報道官は、李氏が強調したソウル・梨泰院の雑踏事故の真相究明に向けた特別法の制定について、尹大統領が不都合な条項があるとして事実上、拒否したと主張した。

 李広報首席秘書官は「尹大統領と李代表は合意には至らなかったが、大局的に認識を共にした部分はあった」として、「医療改革が必要であり、医学部入学定員の拡大は不可避ということで認識を共にした」と明らかにした。「李代表は医療改革が急がれる課題であり、大統領の政策方向が正しく、民主党も協力するとした」と伝えた。朴報道官も「医療改革の必要性に対する同意は成果とは言えないが、ある程度あったとみることができる」と述べた。

 両氏は必要に応じて今後も会談を行う必要があるとの認識でも一致した。