苦情が来た「上司の行動」を報告したら「4年間も自宅待機命令」
日本の3大メガバンクの一角を占める、みずほ銀行。
そのみずほ銀行で、にわかには信じがたい退職強要が行われていた。
2014年9月、関西の支店に勤務していた男性行員が、上司が勤務中に顧客から見える場所で足を組んだ姿勢で新聞を読んでおり、顧客から苦情を受けたため支店長らに態度を改めさせるよう報告。
すると別の部署に異動させられ再三にわたり人事部から退職勧奨を受け、16年4月から20年10月まで4年半もの間、自宅待機を命令された。
男性はうつ病を発症して心療内科へ通院していたが、20年10月に出社を命じられ欠勤を続け、21年5月に懲戒解雇。
男性は社内の内部通報制度を利用して複数回にわたりパワハラ防止法違反を通報したが、銀行側は規定に定められたコンプライアンス担当部門による対応を行わず、人事部が対応を行っていた。
男性は21年、みずほ銀行に対し解雇無効の確認と損害賠償を求めて裁判を起こし、先月24日に東京地裁は「社会通念上許容される限度を超えた違法な退職勧奨として不法行為が成立する」として銀行に330万円の賠償金の支払いを命じた。
「正直なところ、4年も自宅待機をさせられたケースは聞いたことがありません。」
そう語るのは、山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士。
「4年間も『自宅待機』させることは、『これを嫌がって自主的に辞めるだろう』ということを期待した会社の嫌がらせ以外のなにものでもありません。裁判所の判断は、きわめて正当です」
なぜ、懲戒解雇の処分については有効とされたのか。
「これは驚きです。今の日本の法制度では、相当あくどいことをしでかさないと解雇は認められないとされているのです。おそらく、労働者側が、2020年10月に出社を命じられた後、『合理的な理由なく出社しないといった態度』を繰り返したのではないでしょうか。」
メガバンク行員はいう。
「銀行では上司による評価が持つ重要性が非常に重く、1度でも評価でバツがつくと挽回するのは極めて困難で、数年ごとに必ず行われる異動で大きな支店や花形の部署へ配属されなかったり、延々と昇進できないということが普通にある」
「あくまで推察だが、この例で問題行為を報告された上司は、人事部を動かして特定の行員への退職勧奨までさせる権限を持っていた。ということは、役員昇進を控えた部長や支店長クラスの人間だったのではないか」
「銀行の人事部は、役員に言われれば指示を断るわけにもいかず、言いなりになって違法行為に手を染めてしまったというのは容易に想像できる。もっとも、銀行ではバッド評価を付けて昇進させなかったり、地方の支店に飛ばすくらいのことは普通にあるが、4年も自宅待機を命じるというケースは聞いたことがない。よほどこの上司が粘着質な性格だったのか、何かあったのかが気になる」
別のメガバンク行員はいう。
「コンプライアンスの徹底が要求される業態である銀行、しかもメガバンクで、こんなコンプラ違反丸出しの事態が横行しているというのは、かなり問題がある。金融庁が動いてしかるべき対応をすべき事案といえる」
以上、Business Journalからお届けしました。
編集者:いまトピ編集部