2024/5/20 19:25

食品に蔓延するゴキブリ汚染…食品工場はGのパラダイスだった

ペヤングAmazon

今月11日、カップ焼きそば「ぺヤング」を製造するまるか食品が、「当面の間、全工場での生産自粛と、全商品の販売休止」を発表した。これは、商品にゴキブリが混入していたとの購入者の連絡を受けた同社が、外部委託機関の分析結果報告をもとに社内で検証し、「製造過程での混入の可能性を否定できない」と判断したためだ。これを知ったぺヤングファンらが、「ぺヤングにゴキブリ混入→ぺヤング派、絶滅か」「ないとなると、余計に食べたい」「全然、ぺヤング食べるべし!」などとツイッター上などに書き込み騒動になっている。

実はその2日前の10日、日清食品冷凍の冷凍パスタの具材(野菜)にゴキブリと思われる虫が混入していたことを受け、同社が75万食を回収と発表したばかりだった。こちらはその後、それほど騒ぎにはなっていない。

ゴキブリは雑食性で、それこそなんでも食べる。人の食べ物はもちろん、石鹸や毛髪、フン便・タンなどの汚物、動物・昆虫の死体なども食べ、エサがなければ共食いも。エサがなくても、水さえあれば生存可能だ。夜行性で、時に病原菌などをつけて動き回り、「病原菌の運び屋」とも呼ばれる。

それにしても、なぜ厳寒中にゴキブリなのか。古いデータだが、研究論文【編注2】によれば、神奈川県下の鉄筋コンクリート平屋建て乾燥食品製造工場におけるクロゴキブリ捕獲調査で、2月と5~6月、そして11~12月と、捕獲数の多い3つのピークがあったという。クロゴキブリの外部からの侵入口は、工場屋上部の建物継ぎ目だと推測された。

つまり、クロゴキブリは冬の寒さに対して比較的強い。チャバネゴキブリは寒さに弱いが、暖房の普及で冬場の生存も可能になった。卵から幼虫、成虫の順で成長し、成虫の寿命は半年程度だ。メス成虫は一度の交尾で何度でも卵を産むことができる。死ぬまでに生むゴキブリの数はクロゴキブリが50匹、チャバネゴキブリは200匹も。ネズミ算どころではなく爆発的に増える。ちなみにゴキブリの3億年前の化石が出土しており、ゴキブリは人類誕生よりもはるか前から生き続けてきたことがわかる。

貪欲で繁殖力の旺盛なゴキブリにとって食品工場は、エサ・水の豊富さと、寒さへの弱さをカバーしてくれる暖房完備、隠れ場所が多いなどの点で、いわばパラダイスだ。食品工場には食品への混入リスクが高いという前提でゴキブリへの徹底した対策が要求されるが、実状はどうか。

東京都の「食品の苦情統計」【編注3】によれば、2012年度には苦情処理件数合計4867件のうち、「有症」(多少の健康被害があったが、原因特定できず)を除き、「異物混入」が681件、全体の14%を占めてトップだった。さらに、その異物の種類別では、「その他」を除き「合成樹脂類」「金属」に次いで「ゴキブリ」が3番手で73件あった。ただし、うち63件が弁当や仕出しなどを含む飲食店営業によるもので、残り10件が食品工場などで混入が起きた。

ちょうど前出の論文が発表された91年度から12年度までの22年間のデータを見て気が付く点がある。ピーク時の2000年度こそゴキブリが162件で、うち飲食店営業が101件、食品工場などで61件あったが、近年はやや減っているとはいえ、概ねゴキブリは70~100件、うち飲食店営業60~90件、食品工場など10~20件で推移している。基本的に食品のゴキブリ汚染の頻度は変わっていない。それどころか91年度はゴキブリは93件で、うち飲食店営業88件、食品工場など5件あった。つまり、食品工場などでは逆に12年度のほうが10件と2倍に増えている。

この22年間、食品工場の設備も更新され、さまざまな食の不祥事騒動が起こるたびにそれを教訓として食品工場はゴキブリ対策に取り組んできたはずであった。しかし、実際にはそうではなかったと考えるしかない。つまり、ぺヤングと日清食品冷凍の危ない食品事件は起こるべくして起きた、と言えそうだ。ともあれ消費者としては、特にゴキブリは汚物も食べる「病原菌の運び屋」という点を頭に入れておきたい。
(文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト)

以上、ビジネスジャーナルから紹介しました。

食品に蔓延するゴキブリ汚染 フンや死体まで食べ共食いも、1度の交尾で何度も産卵 | ビジネスジャーナル食品に蔓延するゴキブリ汚染 フンや死体まで食べ共食いも、1度の交尾で何度も産卵 | ビジネスジャーナル

編集者:いまトピ編集部