栗きんとん、「コンビニのイートインスペース」で取引される
これは「栗きんとん」をめぐる物語ーーーー。
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うまい栗きんとん(布巾で絞ったやつの方)を作る和菓子屋が閉店した。
しかし、常連には受注制で売っているらしい。
その栗きんとんを受け取りに行け、と叔母に命令された。
受け取り指定場所は、コンビニのイートインスペース(店舗がもうないから)。
行くと、野球帽を目深に被ったおっさんがおり、手には茶色い無地の紙袋を持っている。
「あ、あのー、○○堂(菓子屋の名)さんですか」
と私が声をかけると、おっさんは
「…そうや。ともさんか」
と低ぅ~い声で言い、
「…3800円や」
と。
そそくさと金の授受を行う。
私「あのー、できれば来年もお願いします」
おっさん「そん時になってみんことにはわからんな」
とだけ言い、私に紙袋を渡すと、コンビニから出て町に消えて行った。
なんの取り引きだ。
おっさんは年を取り、栗の皮をむく作業がしんどい。
ので、あんまり作りたくないが、常連がうるさいので受注制で嫌々作っている。
それで、こんな素っ気ない態度になり、結果、ただの栗きんとんなのに闇取引になってしまうのだ。
物事は、無理を通すと闇に潜るのだ。栗きんとんでも。
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そう投稿したのは、とも(@tomo_08_19)さん。
ちなみに、取引相手はともさん、ともさんの叔母さん、近所のおばさんの3名とのこと。
ともさん曰く、
「おっさんは、皮むきも嫌だけど、もう全部嫌なので閉店したようです。だから皮むきお手伝いでは、解決できない問題なのです。
我々常連は、言うなればお菓子屋さんでもないただのおじさんに、無理やり栗きんとんを作る労働を強いているのです。
ひどいですよね我々。」
とのこと。
ファンの声に応え、渋々栗きんとんを作るおじさんの姿が想像できますね…。
これを読んだユーザーからは、
「ひとつの物語として非常に面白い。読んでいて一連の出来事の映像が頭の中で浮かんだ」
「お店側はしんどいかもだけどそれでも求められる人ってすごいよなぁ」
「荒涼とした文体が闇取引感を加速させる」
「食べてみたい」
と、多くの反響が寄せられていました。
もしかしたら食べられるのはこれで最後かもしれないと思うと…なんだか寂しいですね。
翌年も闇取引してくれたのか気になります。
以上、BUZZmagからお届けしました。
編集者:いまトピ編集部