2024/4/21 09:04

『ドラマ』第2話「このドラマの明確な弱点」

テレビ

オークラ脚本、バカリズム主演の『イップス』(フジテレビ系)、19日放送の第2話です。

警視庁捜査1課の刑事・森野徹(バカリズム)とミステリー作家・黒羽ミコ(篠原涼子)は、ともにお仕事上のスランプに陥っていて、絶不調。そんな冴えない中年2人がバディを組んで殺人事件を解決していくという1話完結型のドラマです。

 『イップス』は倒叙を選択しています。視聴者に犯人を推理させるのではなく、先に犯人を明かしておいて、その謎を主人公が解いていくというスタイルです。この場合、「犯人は誰なの?」というミステリーとしての楽しみをひとつ放棄しているわけですから、謎解きには相応の楽しみを用意しなければなりません。「犯人が誰だかわかっていてもおもしろいミステリー」は、普通の犯人がわからないミステリーよりも謎解きがおもしろくなければ、倒叙を採用した意味がないのです。

 だから前回も今回も、倒叙である限り謎解きのおもしろさを求めてしまうわけですが、やっぱちょっとしんどいね。出来としてしんどいです。

 ミステリーにおける殺人犯のタイプというのは大きく分けて2つあると思っていて、ひとつは確固たる殺意をもって綿密な計画を立てて、それを完璧に実行した犯人です。この場合、刑事側に求められるのは犯人の計画を見抜く推理力ということになります。

 もうひとつは、殺すつもりはなかったけど偶然が重なって相手を殺してしまった犯人。例えば憎い相手を突き飛ばしたら、ガラスの灰皿に頭を打って死んでしまったとか、そういう類です。この場合、犯人に計画はないわけですから、刑事側に求められるのは、現場におけるあらゆる可能性を検討する想像力ということになります。

 このように犯行のタイプによって刑事側に求められる解決への道筋も変わってくるわけですが、今回の犯人は「明確に殺意がある」かつ「偶然が重なって」相手を殺しています。計画がぜんぜん綿密じゃないし、かなりの部分で偶然に依存している。適当にバット振ったら偶然ホームランが打てちゃった、くらいの確率で殺人が成功しているんですね。殺意の強さと計画の精度が釣り合ってない。明確な殺意があるのに綿密な計画を立てることができない犯人は、ミステリーの世界では「レベルの低い殺人者」とみなされることになります。

 だから事件が魅力的じゃないんです。その殺人に怨念や執念や信念が乗ってる感じがしない。謎解きに美学を感じない。倒叙なのに謎解きが弱いというのは、このドラマの明確な弱点になっていると感じます。

詳しくは日刊サイゾーがまとめています。

『イップス』第2話 殺意の強さと計画の精度が釣り合ってないのです|日刊サイゾー 『イップス』第2話 殺意の強さと計画の精度が釣り合ってないのです|日刊サイゾー

編集者:いまトピ編集部