【炎上】『メルカリ』2024年11月17日、発表
メルカリで返品詐欺が相次ぎ、運営元が購入者の主張を鵜呑みにして定型的な対応を繰り返すことによって出品者が商品を取り戻せなくなるというケースが続出している問題。メルカリは17日、リリースを発表し、「お客さまサポートの方針と体制の見直し・強化が必要であると考えております」「お客さまが不利益を被ることがないよう、随時対応をアップデートしてまいりますので、しばらくお待ちください」と説明。これについてネット上では
「具体的に何をするのか」
「意味のない声明」
「お気持ち表明」
「今までも同じようなことがあって、ずっと無視されてきた」
などと厳しい反応も目立っている。年間売上規模が1800億円以上にのぼる大規模プラットフォーム事業者であるメルカリは、なぜサポート部門の対応を起因としてこのような声明を出さざるを得ない状況に陥ったのか。また、返品詐欺への有効な対策というのはあるのか。専門家の見解を交えながら追ってみたい。
フリマアプリという市場を大きく成長させたメルカリは昨年でサービス開始から10周年を迎え、月間利用者数は2200万人以上、1秒間に売れる個数は7.9個におよび(2023年6月発表時点)、今や社会インフラのひとつといっても過言ではない。メインの利用者は若者層と思われがちだが、利用者の23%が50代以上となっており(22年時点)、幅広い年代層にとって身近な存在となっている。
メルカリの利用イメージはどうなっているのか。改めて売買取引の流れを確認してみよう。出品者は購入者による支払い完了を確認したら商品を発送し、購入者は商品を受け取り後に「受取評価」を行う。この時点で購入者が「商品に瑕疵がある」「商品説明と実際の商品が明らかに異なる」「梱包の不備により配送時に商品が破損した」といった点を確認した場合は、「受取評価」を行わずに返品して返金を受けることが可能。購入者が商品に問題がないことを確認して「受取評価」を行った後に出品者が「取引評価」を行うと、取引が完了となり、この時点で販売利益が出品者の残高に反映される。
なお、取引完了後は取引キャンセルはできないが、利用規約では、メルカリがサービスの適切な運営のために必要と認める場合は売買契約が成立した場合においても、同社は当該売買契約を取り消すことができるものと定められている。また、「ユーザー間の売買契約、出品、購入等の保証等に関しては、すべて当事者であるユーザーの自己責任とし、弊社は自ら売買を行うものではなく、売買の委託を受けるものでもありません。弊社は、本規約中に別段の定めがある場合を除き、売買契約の取消し、解約、解除、返品、返金、保証など取引の遂行には一切関与しません」とも記載している。
そのメルカリで最近、返品詐欺が相次ぎ、出品者が商品を取り戻せなくというケースが続出している。たとえば以下のような事例だ。
・88万円の商品を売り、購入者による「受取評価」も完了して取引完了になった後、1週間ほど経過したタイミングで購入者から「偽物であるため返品したい」という連絡が寄せられ、偽物であると主張する根拠が示されないため拒否。するとメルカリ事務局から連絡があり、返品要求に応じて代金を返金するよう求められ、偽物であると主張する根拠を確認するため購入者と話し合いを続ける意向を伝えたが、売上金を事務局によって「お預かり」された上に強制的に返品・返金処理を進められ、購入者から返品されないままメルカリから強制退会させられた。メルカリ事務局はこの出品者に対し、「返品のご対応を行っていただきますようお願いいたします」「本通知から【168時間以内】にご対応いただけない場合、お預かりしております残高(売上金含む)については、購入者へ返金となります」というメッセージを送信している。
・新品未開封のプラモデルをメルカリに出品して購入者に商品を発送したところ、「部品が破損しているのでキャンセルしたい」との連絡を受けた。段ボールで2重に梱包するなど注意を払って送付したので破損の可能性は低いと思いメルカリ事務局に相談したが、返品に応じるよう指示され、返品に応じたところ、購入者から別物のパーツ部分がすべて抜き取られたプラモデルが送られてきた。改めて事務局に連絡し、写真付きで被害の状況を伝え、返品は受けたくないと伝えたところ、「購入者に確認したところ、返送した品に入れ間違いはないとのことなのでサポートは終了する」という返答が寄せられ、取引を強制的にキャンセルされた。一連の流れをX(旧Twitter)上で報告したところ、ネット上で事務局への批判の声が高まり、突如「メルカリのSNS担当」から「経緯の見直しおよび補償をする」とのメッセージが届いた。さらに事務局からも「販売代金の入金および購入者へ然るべき対応を検討」する旨の連絡があった。
・iPhone14を出品して購入者に送付したところ、「初期化されておらず規約違反だ」として返品対応を要求された。事前に初期化して郵送しており、その様子を写真にも収めていたことから詐欺を疑い、メルカリ事務局に相談したが、返品要求に応じるように指示された。そこで事務局に「詐欺の可能性があるが、メルカリが補償してくれるのか」と聞いたところ、「できる限りの対応をする」との回答があったことから返品を了承した。購入者から送られてきたのは別物の書籍だったため、改めて事務局に連絡したところ、「購入者が正しくiPhoneを返送したことを確認した」としてサポートを打ち切られた。
・10万円のコーヒーメーカーを出品して購入者に郵送したところ、傷がついているから返品したいと要求されたが、郵送前に傷がない旨を確認していたため事務局に相談した。すると事務局から
「お客さまによる迷惑行為『商品については正確な説明を行わないこと』を確認しております」
「届いた商品が『説明や画像と異なる』場合は、取引を完了することはできません。そのため事務局といたしましても、返品・キャンセルをお受けいただきたいと考えております」
「通知から72時間経過後も、購入者に返送先住所を開示しない、または返品・キャンセルに向けた連絡がない場合は、取引をキャンセルいたします」
と、出品者のほうが迷惑行為を行っているという返答が寄せられた。結局、事務局が一方的に返品要求を認めて取引をキャンセルしたため、出品者の手元に商品は戻ってこず、盗難されたのと同じ状況になった。
なぜメルカリ運営元は“まずい対応”を繰り返したのか。経済評論家で百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏はいう。
「メルカリの問題の根幹には、設立当初からプラットフォーマーとして『個人間の取引にメルカリ側は一切関与しない』というルールを設定したことがあります。これは多くのプラットフォームがリスク回避の目的で設立当初に設定するルールであることは事実です。たとえばSNSの運営企業はフェイクニュースが投稿されることに対して法的に責任を持ちません。それと同様のルールを運営開始当初に設定したことは、ベンチャーの起業としては別におかしいことではないのです。
ただ、メルカリが大きくなるにつれて2つの問題を抱える事態になります。ひとつはパーセンテージとしては少ないけれども一定人数のユーザーが出品者ないしは購入者の立場で詐欺的な取引で被害にあってしまい、その恨みが少しずつ積みあがったことです。
そしてもうひとつが『取引に関与しない』という原則がいつの間にか変節して、詐欺を行う人に有利なルールになっていたことです。今回問題になったのが、購入者が送られてきた商品に不具合があったとして返品を申請したうえで、送られてきたものと違うものを返送するという手口です。取引に関与しないのであればトラブルが解決するまでの間、購入代金をメルカリが凍結すれば、まだ中立といえたかもしれません。ところがメルカリは購入者側にたって取引をキャンセルしてしまいました。この対応が一般に行われてしまえば、購入者側が詐欺を行えば、正直な出品者が損失を被り、詐欺を行った側が得をする仕組みになります。
別の投稿としてSNS上ではこのような事例も報告されました。ブランド品を出品したケースで、購入者が商品を受け取った後で一方的に『偽物を送られた』と主張してキャンセルを申し出たケースです。このケースでは商品が返送されないにもかかわらず出品者の口座が凍結され、出品者は商品が取り戻せない状況になりました。
このように『取引に関与しない』ルールのはずがいつの間にか、詐欺側に有利な形でメルカリが取引に介入している事例が増加したことが今回の炎上につながりました、とビジネスジャーナルが報じた。
編集者:いまトピ編集部