サイゼリヤ、不満の声
値下げをしないと宣言しているイタリアンレストランチェーン「サイゼリヤ」で徐々にメニュー数が少なくなっていることに落胆の声が広まっている。
ここ数年を振り返ると、「カリッとポテト」、フランスパン風の「ミニフィセル」、スパゲッティメニューの「大盛り」「おこさま」サイズ、トッピング用粉チーズ「ペコリーノ・ロマーノ」、「エビと野菜のトマトクリームリゾット」などが全店舗、もしくは一部エリアで販売終了となっている。この動きを受け、「値上げしていいからメニューを充実させてほしい」「高価格帯のメニューも投入してほしい」といった声もあがっているが、なぜサイゼリヤはそうした手段を取らないのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏はいう。
「値上げをしない宣言をしたということは、『効率化』と『コスト削減』の2つのキーワードに力を入れていくという宣言ともとれます。
効率化とコスト削減で考えた結果のひとつがメニュー数の削減、絞り込みだったのでしょう。食材のロスにつながるような作業を減らし、オーダーの集中化による大量仕入れで食材コストをより抑え、製造段階でも効率化を図り、より少ないスタッフで店舗を運営しようと考えた結果だと思います。イタリアンのお店なので、牛丼店やラーメン店のような単一商品を扱うという形態にまではいけなくても、極限までメニューを減らす努力と、どこまで可能かテストをしている最中だと思います」
外食チェーン関係者はいう。
「メニューの種類を増やすと、その分、仕入れる原材料の種類も増え、厨房の手間と負荷も増すため、回り回ってコスト増につながります。サイゼリヤは直近の通期決算は増収増益となっているものの、国内事業だけみると前年度こそ黒字を確保したものの赤字の年もあり、利益的には非常に厳しい状況が続いているため、コスト増につながる取り組みというのは、なかなかやりにくいでしょう。そうしたなかで利益を底上げするために、できるだけメニューの数を絞るという方向にいくのは仕方がないです。サイゼリヤはやはり圧倒的な安さという点が集客の武器となっているので、メニューの数について多少の不満が出たところで、それが原因が客数が減るということは考えにくいです。
ちなみにサイゼリヤが『ミニフィセル』を一部エリアで終了させたのは、同じパン類の『フォッカチオ』があり、さらに販売数的に『フォッカチオ』のほうが多いため『ミニフィセル』はやめても問題ないと判断したのかもしれません。また、パスタの『大盛り』『おこさま』サイズについては、通常チェーン店ではあらかじめ一人前の単位で下調理・保管されたものを店舗の厨房で最終調理して出すので、『大盛り』や『おこさま』のサイズがあると中途半端な量の余り=ロスが生じてしまうという事情によるものかもしれません。『多めに食べたいなら2皿注文して、少量でよいなら通常サイズを注文して無理に全部食べずに残してくださいね』ということでしょう」
しかし、サイゼリヤは自分たちの強みを守るために、今後の方針、経営戦略として『値上げはしない』『安さを目指す』と宣言しましたから、オペレーションが今より煩雑になる=今よりコストが上昇する要因となることは現時点では考えず、『どうしたら価格を維持し、安さを喜んでくれるお客さまの期待に応えられるか』をベースに、対応策のひとつとしてメニュー数減少を進めているのでしょう。明確な強みやウリを持ってすでに繁盛しているお店ですから、自分たちの強みを弱めるような戦略は、そう簡単には取れないのだと思います。やろうと思えばできないことはないでしょうが、あえてやらない、その戦略を取らないだけだと思います。
かつて280円や300円といった全品均一価格の居酒屋が流行った時期があり、最初のころは重宝され流行りましたが、原価の問題で提供できるメニュー数が限られてだんだん飽きられ、他店との差別化が難しくなり廃れていった例もあります。ですので、あまりに絞りすぎることによってメニューを選ぶ楽しさや選択肢が減るという懸念はあるように思えます。安いからといっても毎日同じものを食べたい人は少ないでしょうし、世の中には他にも安い食べ物の選択肢はあります。現在のサイゼリヤには安さという差別化があり、安いサイゼリヤが好きなお客たちに支えられ繁盛していますから安さは大事ですが、この先は飽きさせないメニューや外食の楽しさを感じるメニューをより意識する時期がくるかもしれません」 と、ビジネスジャーナルは報じた。
編集者:いまトピ編集部