『秋ドラマ』第9話「悪趣味な観察記録のよう」
おもしろいことが起こっているな、と思うのは、ドラマ『わたしの宝物』(フジテレビ系)のみなさんの感想などSNSで探ってみますと、けっこう「冬月が悪い」と「ヒロキが悪い」という両極端の意見があったりするわけです。冬月を演じているSnow Man・深澤辰哉のファンの方は冬月派で、ヒロキ役の田中圭のファンはヒロキ派という傾向が強いようです。
そりゃ画面に映っているこの男を愛せるかどうかなんて顔要素が占める割合が大きいのは自然なことですし、実際の恋愛や結婚だって相手の見た目がドンピシャに好みなら許せないことも許せてしまうのが生き物としての摂理でしょう。
ただ、どちらのファンも「担当にこんな役をやらせてかわいそう」とは思っていない感じがするんですよね。それは、冬月もヒロキもよくないところは大いにあるけど、その事情がちゃんと視聴者に伝わっているということなんだと思うんです。モラハラに明け暮れていたヒロキも、人妻相手に避妊しなかった冬月も、基本的には悪いやつじゃないし、けっこう真面目に生きているし、人としての優しさがあるということが伝わっている。その上で、好きだ嫌いだという判断をされている。
その分、リサ(さとうほなみ)とマコト(恒松祐里)という女性2人が割を食ってる感じはしますが、今回はリサがしこたまやられましたね。女として、背負ってるものが違いすぎたね。
「よっぽど好きなんですねえ、冬月さんのこと。……嫉妬ですか?」と言ったときの、ミワ(松本若菜)の顔。言われたリサの顔。こういう人間の意志と怨念の宿った顔を見るためにドラマを見ているといっても過言ではありません。第9話、振り返りましょう。
第1話のレビューで「こうなっちゃった夫婦が今後どうなっていくのかという、ある意味で悪趣味な観察記録を見ていくようなドラマになっていくのでしょう」と書きました。
当時のヒロキはバリバリのハラスメント野郎でした。
そのヒロキが、生まれた赤ちゃんの顔を見て完全無欠のイクメンパパへと変貌し、本気でこの子の幸せを願ってむちゃくちゃ真剣に考えた名前が「栞」だったことで、結果、ミワの冬月への思いを知ることになってしまった。
ああ、残酷な運命……なんて勘違いしそうになりますが、この話は作り物ですからね。運命でもなんでもなく、こうやって登場人物たちを苦しめて、その苦しむ顔を大勢の人に見せてやろうって魂胆の大人たちがいるということです。
見てる方も悪趣味だけど、やっぱ作ってるやつらがいちばん悪趣味だよな。大好き。と日刊サイゾーは報じた。
編集者:いまトピ編集部