『ガスト』2024年12月29日まで『サイゼリヤ』よりも、安い
ファミリーレストラン「ガスト」が12月29日(一部商品は異なる)まで実施中の半額クーポンの破壊力が半端ではないと話題を呼んでいる。このクーポンをうまく活用すれば、低価格がウリで人気のサイゼリヤよりも安く、かつボリュームが多い料理を食べることができるというのだ。果たして、どのような内容なのか。そして、一見すると大きく利益を削る要因となりかねない大幅値引きクーポンを大々的に配布する狙いはなんなのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。
1246店(24年10月31日現在)を展開するガストは、2位の「サイゼリヤ」、3位の「ジョイフル」、4位の「ココス」、5位の「バーミヤン」を抑えて国内ファミレスチェーンとしては1位(店舗数ベース)。「バーミヤン」「しゃぶ葉」「ジョナサン」「夢庵」などを運営する「すかいらーくグループ」の顔といえるブランドだ。「チーズINハンバーグ」(税込700円/価格は店舗によって異なる/以下同)、「鉄板目玉ハンバーグ」(600円)、「マルゲリータピザ」(790円)、「山盛りポテトフライ」(400円)などが人気メニューだ。
一部で話題を呼んでいるのが、期間限定で展開中の「年末大感謝祭セール 半額クーポン祭り」だ。たとえば、通常価格が700円の「チーズINハンバーグ」は350円に、790円の「マルゲリータピザ」は395円に、540円の「アサヒスーパードライ ジョッキ」は270円に値下げされる。ちなみに同じく「すかいらーくグループ」の「バーミヤン」「しゃぶ葉」「ジョナサン」「夢庵」でも半額クーポンが配布中であり、クーポンはスマートフォンにダウンロードした「すかいらーくアプリ」から取得する。
外食チェーン関係者はいう。
「例えばサイゼリヤで『バッファローモッツァレラのマルゲリータピザ』(400円)とチーズが乗った『イタリアンハンバーグ』(500円)を食べると合計900円ですが、今ガストでクーポンを使えば『チーズINハンバーグ』と『マルゲリータピザ』を合計745円で食べることができます。ボリュームは概してガストのほうが大きいので、ガストのほうがオトクということになります。
あまり認知されていませんが、実はガストはアプリ上でしばしば割引券を配信したり、X(旧Twitter)のキャンペーンで食事券を配布しており、それを使うとかなりの値引き率で注文でき、サイゼリヤより安く食べられるケースは多いんです。ただ、今回の値引きキャンペーンは半額対象となるのが5商品で、ごく一部のみなのに対し、サイゼリヤはすべての料理が毎日、非常に低い価格で食べられるため、こまめにガストのクーポンをチェックしていない消費者は『とりあえずサイゼリヤへ行こう』という行動になりやすいかもしれません」
では、なぜガストは利益の圧迫要因となりかねない半額値引きキャンペーンを大々的に展開するのか。
「半額キャンペーンの対象となるのは、ビールと子ども向けのキッズプレートを除けばハンバーグとピザのみですが、たとえば家族やグループでガストに行ってそれだけを注文するというケースは少なく、大抵はサラダや『山盛りポテトフライ』などのサイドメニューやご飯もの、デザートなど、他の料理も複数注文しますし、『ハンバーグが半額になるので、それでお金が浮く分、もう一品追加で注文しよう』という行動が生じることも期待できます。半額キャンペーンでお客の来店を誘い、半額対象以外のメニュー以外のものを多く注文させるというのが狙いであり、トータルで見れば利益的にはメリットのほうが大きいでしょう。店舗型ビジネスは、何よりお客に店に来てもらわなければ何も始まらないため、大きな集客を達成できただけで成功という面もあります。
それ以上に大きな目的としては、アプリ利用者の増加だと思われます。半額キャンペーンにつられて店に来て、クーポンの利用には原則アプリのダウンロードが必要だと考えてダウンロードするお客も一定数いると思われ、『すかいらーく』としては、まさにそれが狙いでしょう。日々、頻繁にアプリ上でクーポンを配布していても、アプリの利用者が少なければ効果は限定的ということになってしまいます。また、『すかいらーく』のアプリはバーミヤンやジョナサンなどグループ内の他のチェーンのクーポンも一斉に配信しているため、グループ全体でのお客の囲い込みにもつながります。
ただ、たとえばサイゼリヤはEDLP(Everyday Low Price)型で“毎日・全商品が安い”という方針のもとでクーポンを配布しておらず、マクドナルドも以前と比べて大幅な値引きで集客するという戦略とは距離を置いているように、外食業界の勝ち組は脱クーポン依存のスタンスを強めています。クーポンを乱発すると、クーポンを出さないとお客が来なくなるという悪循環が生じるリスクがあるため、『すかいらーく』も今後、クーポンなしでも常にお客が足を運んでくれるような施策にシフトしていく可能性はあるでしょう。さらにいえば、近年のガストは、特段に安いともいえず、かといってワンランク高価格帯の『ロイヤルホスト』のような特別感・贅沢感もなく、やや中途半端な立ち位置になりつつあり、お客に選ばれる理由が薄くなっている印象が否めず、抜本的な改革が必要かもしれません」(外食チェーン関係者)と、ビジネスジャーナルが報じた。
編集者:いまトピ編集部