2025/1/3 10:20

『東京美容外科』、解任を発表

泣く

大手美容クリニック・東京美容外科の沖縄院院長で医師の黒田あいみ氏が、グアムで行われた解剖研修に参加した際のものとして、遺体の前でピースする自身の姿を収めた写真や、「頭部がたくさん並んでるよ(スマイルマーク)」という文言とともに複数の遺体が並んだ写真、「いざfresh cadaver(新鮮なご遺体)解剖しに行きます!!」という文言とともに自身の笑顔を収めた写真などをブログに投稿した問題。日本美容外科学会(JSAPS)は今月26日、「医療従事者としての倫理観を著しく欠いたものであり、断じて容認できるものではありません」とする声明文を発表。これに対し東京美容外科の統括院長を務める麻生泰氏はX(旧Twitter)上に「美容外科医師に高い倫理観なんかあったら、アクアフィリングやヒアルロン酸を胸にぶち込んだりせんやろ」「俺がメス置けば終わるんかよ」などと投稿し(現在は削除済)、議論を呼んでいる。黒田氏は解剖研修に参加した理由について「解剖の知識とスキルの向上のため」「医師としてより向上し、患者様の満足度をよりあげるため」と説明しているが、医療現場で働く現役医師が解剖研修に参加する意義とは何か。また、日本美容外科学会が言及する「医師の倫理観」とは具体的に何か。専門家の見解を交えて追ってみたい。問題となっていたのは、黒田氏が今月にブログに投稿した記事だった。黒田氏は謝罪コメントで「写真に写ってしまったご遺体は 全てモザイクをかけていた つもりでおりましたが 一部出来ていないところがありました」「より多くの医師に知ってもらうことで より安全に、より多くの患者様の満足度をあげることができる、と思い、投稿しました」と説明したが、批判の広まりを受けて東京美容外科は黒田氏の解任を発表。統括院長である麻生泰氏はX上で「動機は善で、彼女に他意はありません」「炎上でトカゲの尻尾切りのように解雇する事はできないと判断しました」と説明した。

黒田氏が参加した解剖研修は米国グアムで行われたものだが、美容外科医のドラゴン細井氏は自身のYouTubeチャンネル上で「昨今の海外でのご献体を使った(解剖)実習に関しては、イベント要素が強くなっていた感はあったんです。バケーションも兼ねてとか、という印象。ハワイとかグアムとかもそうなんですけど、旅行と実習が一緒にかけ合わさったり、少し楽しいみたいなイメージは、本来あるべきではないんですけど、そういうイメージがつきつつあるプロモーションになっていたと思います」と説明している。

騒動を受けて日本美容外科学会は以下内容の声明を発表。

「医療従事者としての倫理観を著しく欠いたものであり、断じて容認できるものではありません」

「美容外科医としてその肩書を用いる以上、社会的責任を伴う行動が求められることを強調したいと思います」

「今後も全ての美容外科医が高い倫理観をもって行動するよう、学会として努力を続けて参ります」

 声明文では医療従事者としての倫理観に繰り返し言及されているが、医師に求められる倫理観とは何なのか。前出・新見氏はいう。

「大学医学部のなかには、医療倫理に関する授業を設けているところと、ないところがあります。かつて医学部のカリキュラムは1~2年次は医学と直接的な関係がない一般教養を学び、3年次から医学の勉強をするかたちでしたが、昨今では医師国家試験が難化していることも影響してか、1年次からみっちり医学の勉強をするかたちになっているところが多いです。18歳ぐらいの時点で一定の倫理観を持っている人もいれば、そうではない人もいるでしょうし、社会人が持つべき倫理観を持たないまま医師になる人もいるかもしれません。

今回の件でいえば、医師、もしくは美容外科医は倫理観が欠けているのかどうかという議論は正しくはなく、単に個人の資質の問題でしょう。どのような職業の人であれ、多くの人はご遺体の前で笑顔で記念写真の撮影をするという行為はしないでしょう。ですので、医師としての倫理観がどうかという問題ではありません。

 また、今回の件と直接的な関係はありませんが、美容外科をめぐっては近年、注目されているある変化がみられます。一般的に医師は医師国家試験の合格後に2年間、臨床研修に従事し、その後の数年間は専攻医(旧・後期研修医)として働いた後に専門医資格を取得しますが、近年では臨床研修を終えるとすぐに美容クリニックに勤務する人が増えており、『直美(ちょくび)』といわれています。その数は毎年2%ほどといわれていますが、これは結構大きな数値です。一般的に医療の現場で前期臨床研修を終了していなければ、臨床業務は行えないということになっており、美容外科は形成外科に含まれるため、これまでは形成外科医が専門領域の一つとして行うものでした。直美が増えている理由は一概にはいえませんが、現在、医師の賃金は一般的な会社員の1.5~2倍ほどで、大企業社員のほうが高いケースは少なくなく、大学病院や一般的な病院の勤務医よりも賃金が高いからという理由ですぐに美容クリニックに勤める人もいるかもしれません。ちなみに、大学病院の経験豊富なベテラン医師が大学を辞めて美容クリニックに勤務するというケースも出てきています」

日本美容外科学会の声明をめぐっては、東京美容外科の統括院長である麻生泰氏がX上で前述のとおり反論を展開している点も議論を呼んでいる。東京美容外科は、著名医師で医療法人社団東美会理事長の麻生氏が2004年に設立し、国内・海外(ドバイ)に計約20の医院を展開。AGAスキンクリニックやメンズライフクリニックなど計8つのブランドを運営する麻生美容クリニックグループの中核となるクリニックだ。「熟練医師のみが施術執刀」「開業以来20年医療事故0」「麻酔科医常駐」を特徴とし、「美容外科医師として10年以上の経験を持つ医師、或いは、形成外科学会から認定を受けた医師、または、東京美容外科で3年以上の経験を積んだ医師のみが メスを握ることを許されています」(公式サイトより)としている、とBusiness Journal が報じた。

東京美容外科・麻生院長が反論「美容外科医に高い倫理観なんか」…解剖研修問題東京美容外科・麻生院長が反論「美容外科医に高い倫理観なんか」…解剖研修問題

編集者:いまトピ編集部