2025/2/15 09:03

『売れ残り』大量販売も、大量廃棄ではなかった...「約1.3倍」も

恵方巻きAmazon

節分の日にあたった2月2日、例年同様にSNS上にはスーパーなどの小売店で夜になっても大量に恵方巻が売れ残っている様子の報告が多数寄せられ、食品廃棄の問題がクローズアップされていた。だが、実は売れ残り商品は全量が廃棄されているわけではなく、一部は養豚農家向けの飼料としてリサイクルされている。どのようなプロセス・技術によってリサイクルが行われているのか。また、どれくらいの量がリサイクル事業者に持ち込まれているのか。事業を手掛ける日本フードエコロジーセンターへの取材を交えて追ってみたい。

 毎年、節分の日にはスーパーに大量の恵方巻が並べられ、夕方を過ぎると売れ残った商品が半額などに値引きされる光景は風物詩と化している。価格は年々上昇傾向にあり、帝国データバンクの発表によれば、今年の一般的な五目・七目の恵方巻の平均価格は1094円(税込み)で、前年比14.2%の上昇。高級志向の海鮮恵方巻は平均1944円で、同12.4%の上昇。

スーパーやコンビニエンスストアが恵方巻の販売に力を入れるようになり始めたのは、2010年代に入ってからだといわれている。元来の7種の具材を巻く形態ではない多種多彩な商品やスイーツまで登場し販売競争が過熱する一方、売れ残りによる大量廃棄が問題視され、事態を重く見た農林水産省が19年1月に日本スーパーマーケット協会や日本フランチャイズチェーン協会などに対し、需要に見合った販売をして廃棄量を削減するよう呼びかける事態に発展した。同年には食品ロス削減推進法が施行され、ここ数年は毎年、この季節になると恵方巻の大量販売・廃棄が議論を呼ぶこととなっている。

そんな恵方巻だが、実は売れ残った商品の一部はリサイクルされている。毎年、一定量を受け入れている日本フードエコロジーセンター(J.FEC)では、専用の容器で食品関連事業者から持ち込まれた商品を開封し、中身を高圧洗浄機で洗い出した後に異物を手作業や金属探知機で除去し、破砕して水分とともに水分率78~80%のお粥状に加工。貫流蒸気ボイラーや熱交換器、加熱ホールドタンクなどの専用設備で大腸菌やサルモネラ菌などの殺菌処理を行い、乳酸発酵によりpH4以下に調整して保存性を高めた液状飼料を製造して、タンクローリーで養豚農家へ出荷している。さらに油分や塩分が多いものなど飼料に不向きな食品については、加工後に関連会社であるさがみはらバイオガスパワー株式会社(SBP)へ移送。メタン発酵によってバイオガスを発生させ、出力528kW(一般家庭約1000戸分に相当)のガス発電を行う形で、固定価格買取制度(FIT)を活用した売電事業を行っている。

J.FECのリキッド状(粥状)の飼料は一般配合飼料の半分程度の価格と安価なだけでなく、粉塵の発生がなくなるため肺炎などの疾病率が低下し、抗生物質の投与を軽減できるといった農家の声があり、安全で健康的な豚肉を消費者に提供できる飼料として評価が高い。この飼料によって育てられたブランド豚肉は「優とん」「旨香豚」等として商標管理されており、一般の豚肉に比べ、オレイン酸が多く含まれ、コレステロール値も少ないヘルシーな豚肉となっている。

 J.FECが契約している食品関連事業者は、事業所の数にして計200以上。受け入れている原料は野菜・パン・ご飯・麺類・総菜・スポンジ生地・乳製品・ゼリー、シロップ類などさまざまだ。

 J.FEC担当者はいう。

「『食品廃棄物のリキッド飼料化』という技術によって、処理過程で生じるエネルギーコストにも配慮しながら、できあがった再生資源を製品化・ブランド化して広く流通させるところまでをトータルに支えるサービスを展開しているのが特徴です。弊社はこの取り組みを『リサイクル・ループ』と呼称していますが、それが事業として成り立つ(経済的合理性を有する)かたちで継続できているからこそ、第2回ジャパンSDGsアワード受賞などで評価していただけたと考えています」

では、節分の時期には恵方巻はどれくらいの量、持ち込まれているのか。

「ある食品関連事業者さま3社から持ち込まれる食品の量でみますと、1月の一日平均が合計2444kgで、1月31~2月3日の一日平均が3284kgと約1.3倍になっており、この増加分の840kgがほぼ恵方巻分と考えられます」(J.FEC担当者)

 単純に廃棄する場合と比較して、リサイクルの場合は食品関連事業者が負担するコストはどうなっているのか。

「食品廃棄物の種類や量、運搬コストなどによるため一概には言えませんが、弊社でリサイクルしていただくほうが単純に廃棄するより低コストとなる場合も多くあります」(J.FEC担当者)

 大手小売りチェーン関係者はいう。

「食品廃棄は発生しないことが理想だが、現実的にはゼロにすることは難しい。なので、こうしたリサイクルの動きが広まることは望ましいといえる」

と、ビジネスジャーナルが報じた。

売れ残りの「恵方巻き」全量廃棄ではなかった…飼料にリサイクルしブランド豚肉 | ビジネスジャーナル売れ残りの「恵方巻き」全量廃棄ではなかった…飼料にリサイクルしブランド豚肉 | ビジネスジャーナル

編集者:いまトピ編集部