2025/2/23 13:01

ジャニー喜多川の『お別れの会』、祭壇に向かって「おまえ、地獄で待ってろよ」

びっくり

1月23日に芸能界引退を発表した元SMAPのリーダー・中居正広の女性トラブルを巡る問題で、開局以来の大ピンチを迎えているフジテレビ。

港浩一社長は17日、同局幹部社員の関与が疑われていることなどについての記者会見を開いたが、限られたメディアしか参加できず、テレビカメラによる取材NGという閉鎖的な姿勢が批判された。

会見で、港社長が中居の問題について把握したのは「2023年6月」だと判明。2023年6月といえば、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」がちょうど発足した時期だ。

この年の3月、イギリスのBBCが『J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル』と題したドキュメンタリーを放送。旧ジャニーズ事務所の創業者・故ジャニー喜多川氏の性加害問題が明るみになり、世界を揺るがす大騒動に発展した。

奇しくも同時期に、かたやベールがはがれ、かたや隠ぺいされた2つの性加害問題。“ジャニーズ”でつながっているのは、果たして偶然なのだろうか。

昨秋、ジャニー氏の性加害問題について、さまざまな形で告発を続けてきた「ジャニーズ性加害問題当事者の会」元代表・平本淳也氏にスポットを当てた『ジャニーズ崩壊の真実 命を懸けた35年の足跡』(小社刊=本体1700円+消費税)が発売された。

35年以上にわたる旧ジャニーズ事務所と平本氏との関係を詳細に記し、ルポ形式でメディアが触れていない事件の真実を明かす。

※以下、第3章「孤独な戦い」から一部抜粋

世界的にも類を見ない少年に対する大量性加害事件について、これを根本から解決しようという人権意識のようなものは、日本のマスコミ報道からはまったく感じられない。

これは海外の基準からすると、とんでもなく異様なことであり、「こんなに重要なニュースをなぜ報じないのか?」「完全解決となるまで徹底追及するべきだろう」という一種の問題意識が、のちのBBCによる番組制作へとつながることになる。

平本のところへBBCから連絡があったのは、まだコロナ騒動前の2018年のことだった。

「ジャニーのことを語れるのが僕しかいないから、僕のところに来たんです。それで先方の関係者と新宿の喫茶店で会いました」

平本はこれ以前にもBBCとつながりがあり、日本の芸能界や地下アイドル文化の特集番組で、キャスティングを手伝ったりしたことがあった。

「それもあって、以前に関わった番組とは別のスタッフだったけど、BBCにおいては『日本の芸能界のことなら平本に聞け』というふうになっていた。元ジャニーズということから、BBC以外にも海外メディアの取材はよくあった。それでもこのときばかりは、ジャニーの犯罪をテーマにした番組をつくりたいというので、かなりびっくりしたよね」

BBC側は、文春裁判などある程度の資料と情報を整理しながら、このスキャンダルが日本では事件にも犯罪にもなっていない不思議な状況を紹介する意向だという。

いわゆる暴露系とされる書籍や雑誌記事に携わってき平本は、ジャニーズ事務所の幹部社員たちから煙たがられていたが、新旧ジャニーズメンバーたちとの交友関係は、ほかの誰よりも広かった。

独りぼっちで戦い続けてきた中で身に付けた交渉術や、天性の人当たりの良さにより、同期はもちろん、先輩や後輩たちとのネットワークをしっかりキープしていた平本は、ジャニーの所業についても常に新たな情報をつかんでいた。

性被害を公に告白する者はいなくても、いつの時代もジャニーの虐待行為があったことは、しっかりとチェックし、把握していた。

欧米において、権力を持つ著名人の性暴力が次々と明らかになり、いわゆる#MeToo運動も広がりを見せていたにもかかわらず、なぜ日本では、かねてから俎上に載せられてきたジャニー喜多川を追及しないのか。

BBCの取材は、そのことに対する疑問から始まったものだった。

ただし、この時点では番組制作が決まっていたわけではなく、まだ企画を立てる前の予備取材の段階であり、つまり、その打ち合わせに参加していた平本は、実質的に企画立ち上げから関わっていたことになる。

「BBCから連絡があったときは、まだジャニーは生きていたからね。2023年からのジャニーズ追及の動きについて、『ジャニーが死んでしまって弁明ができなくなってから告発するのは卑怯だ』などという人間もいるけれど、それが一番ムカつく。僕は35年前のジャニーが現役バリバリのときから、1人でずっと言ってきた。それを誰も聞く耳を持たずに無視してきただけ」

最初はBBC側の記者から、メールで「ジャニー喜多川に焦点を当てた番組をつくりたい」との連絡が入った。

「それで、面白いじゃないですかと即答しましたよ。日本のメディアは誰もそういうことを言ってくれない。YouTubeとかニコニコ生放送の配信者などからしか声がかからないのに、それをBBCがやってくれるという。なんといってもBBCはイギリスの公共放送ですからね。日本でいえばNHKと同格の存在で、その歴史や世界規模の影響力からすれば、NHKよりも権威がある」

そうして番組制作に向けて、内容やキャスティングなどの打ち合わせを続けている中で、2019年7月9日、ジャニー喜多川がくも膜下出血により亡くなった。

「それからも話自体は続いていたんだけど、ちょうど新型コロナの流行が始まって、BBCのスタッフが来日することが困難になった。向こうは『行けるようになったら行きます』と言うんだけど、水際対策がどうのこうのとドタバタしているうちに、あっという間に1年、2年が過ぎてしまった。それでようやく2022年9月に撮影が終わったんです。取材では僕個人だけでも10時間ぐらいインタビューされましたからね。ただ、番組で使われたのは5分ぐらいだったけど。そこはちょっと寂しいよね」と苦笑い。

取材においては、日英の問題意識の差をひしひしと感じたという。

「これまで日本の記者や媒体からは聞かれなかったけど、被害の状況をBBCの記者はしっかり聞いきた。日本人はどこか被害者に対して遠慮があってか興味がないのか、具体的に何をされたかまでは聞いてこない。こっちが『ホモ行為を強要された』と言えばそこでおしまいで、あとは記者側で勝手に脳内補完してくれるというか、具体的な内容については読者に委ねるようなところがあった。だけど、BBCの取材は容赦なかったね。これは決して悪い意味ではなく、こっちとしては詳細を話すことは精神的につらくて苦しいことなんだけど、でも、その被害の実態を明らかにすることによって、ジャニーの異常性を世間に知らしめることができるという。それが彼らにとってのジャーナリズム精神ということなんでしょう」

そもそも日本社会においては「ホモ行為」に対して、明確な共通認識が定まっていない。

どんなことが行われるのか、人それぞれによって頭に浮かぶ行為の内容は異なるだろう。

平本をはじめ告発者たちは、それを「やられた」という一言で済ませ、詳細までは触れないことで、過去のおぞましい記憶から自意識を守ってきた。

だが、時に世間の想像する「やられた」が、自分の実際にやられた行為よりもひどいものだったりする。

そうすると「やられた」と思われることの恥ずかしさや気持ち悪さが増幅して、それで、ついつい「やられていない」と言ってしまうこともある。

被害の事実をないものとすることによって、「自分は汚れていない」と自ら言い聞かせるのだ。

2019年9月4日には、東京ドームにおいてジャニー喜多川の『お別れの会』が開催された。

東京ドームでこのような会や葬儀が行われたのは史上初のことであった。

これを演出したのは滝沢秀明で、彼のジャニーに対する深い愛情がうかがえる。

午前11時からは関係者のみ、午後2時からは希望者全員が参加できる会が開かれた。

午前の部にはジャニーズ事務所の所属タレントや芸能関係者、約3500人が集まったが、その中に平本の姿もあった。

「あれは慰霊じゃなくて騒ぎに行ったの。祭壇に向かって手を合わせながら、内心では遺影にパンチで『ペッ!』だよ。『おまえ、地獄で待ってろよ』みたいな。関係者ということで僕が入って、そこにジャニーズの仲間や友達を連れて行った。おちゃらけて、はしゃぎに行ったのであって、泣きに行ったわけじゃない。だからといって、あの場でジャニーへの憎しみを表現するのも、人として違うでしょう。いくらなんでもそれは不謹慎だから。それであのときは祭壇の前でみんなで踊ったの」

20歳そこそこから訴え始めた性加害問題は、50代後半になってようやく陽の目を浴びたが、ジャニーが亡くなったときには「もう一生、責任を取らせることはできなくなったのだ」と、あきらめの心境にもなったという。

「ジャニーに対しては憎いというか、なんていうんだろう。すごく簡単な言葉でいうと『ダマされた』ということになるんじゃないかな。入所していたときは、何も知らない子供だったから、ジャニーの言うことはそのまますべて聞くしかなかった。そこは他のメンバーたちも、みんな同じだったと思う。確かに『それをしなければスターになれないんだ』という、洗脳的なダマしがあったわけ。そうして言うことを聞いた結果、利益という言い方はおかしいのかもしれないけれど、得られた人と得られなかった人たちがいる。得られた人というのは、今でも活躍している。得られなかったというのは、僕たちのように退所せざるを得なかった人たち。そのことに気づいたときの悔しさ、恨みつらみというのは、やっぱりある。だけどそんな憎い相手ではあっても、大前提に憎しみがあるかというと、それはちょっと違う。ジャニーに対してはやっぱりどこかに、当時は憧れの対象だったジャニーズを基礎からつくった人という思いがある」

その点では同じ性被害でも、夜道で見知らぬ男にレイプされたというような例とは、多少なりとも感覚が異なる。

「あと、やっぱり大きな問題として、小中学生とはいえ誘いを断って、事務所を辞めることもできたというのがあるわけ。つらい中にもわずかな選択肢はあった。でも、そうしてしまうとすべてが終わって、夢も希望もなくなる。小中学生の思春期の子供にとって、それを選択することはあまりにも苦痛だった。スターを夢見て頑張って、我慢もしてきたのに、ジャニーの誘いを蹴飛ばしたら、すべてがなくなるということが分かっているから、何もできない。その意味で言えば、ジャニーの性加害に対しては悔しさよりも哀しさのほうが、絶対に上回っている。ジャニーさえいなければという思いはありながら、でも、ジャニーがいなかったらジャニーズ事務所もない。考えは堂々巡りになってしまう」

愛憎相半ばするというには、憎の部分のほうがかなり大きいのだが、とはいえ愛憎のどちらかに片寄っているわけではないというのが、多くの元ジャニーズの人たちに共通する見解のようだ。

すでに亡くなってしまったジャニーの加害責任を追及することに、異議を唱える声もあるようだが、海外の場合だと死後に補償を求められるというのは、決して珍しいことではない。

BBCの番組に企画前の段階から加わり、それがジャニーズ崩壊の端緒になったことは、一連の性加害事件における平本の大きな功績であろう。

そして平本による2つ目の大きな功績が、「国連によるジャニーズ問題への言及」を引き出したことであった。

2023年5月14日、ジャニーの性加害問題に対するジュリー社長の謝罪動画が公開されると、一気にこの問題を追及する報道が過熱した。

それは平本にとって喜ばしいことではあったが、まだ決め手に欠けるとの思いもあった。

この問題を世間に向けての謝罪で終わらせてはいけない。

それでジャニーズが生き残るのであれば、被害者たちは救われない。

被害者すべてが救済されるためには、どうすればいいのか。

被害は数十年前から続いていることであり、強制わいせつ罪などの現行法では罪に問えない事例も多い。

そうして考えた結果、思い至ったのが「人権問題」だった。

これはただのわいせつ事件ではなく少年たちの人権に関わることであり、被害者に対して何もせずに放置してきたことは、重大な人権侵害事案ではないか。

ジャニーの犯した罪は、個人としての性加害というだけではない。

ジャニーズ事務所という組織の仕組みが、加害に加担し、長期にわたる隠ぺいを可能なものとしてきた。

人権を侵害する組織犯罪であり「ジャニーズ問題=人権問題」なのだと考えたとき、たどり着いたのが国連だった。

平本が国連のホームページを調べると、人権について語られている項目がいくつもあった。

「忘れもしない2023年6月14日、僕の57歳の誕生日に記念となる仕事をしようと、日本で起こっている史上最悪な事件についてのメールを国連に送ることにした。英語はしゃべれないけど、文章であれば今はいい翻訳ソフトがあるから、それを使えばなんとか書くことができる。ある程度まで書いたところでソフトにかけて、それで間違いを訂正するという感じで頑張りましたよ」

被害そのものは過去のことであっても、多くの被害者たちは心身の害を抱えて安心して生きられる環境ではないということ、何千人もの被害者を生んだ性犯罪が放置されてきたこと、日本でそれが許されてきたこと、被害者たちのほとんどが未成年の少年だったことなどを記し、国連本部に支援を仰ぐとともに、スピーチをさせてくれるよう願い出る内容のメールであった。

国連へのメール送付と並行して、日本弁護士連合会(日弁連)の人権救済に関連する窓口にも同時期に申告をした。

「そうしたら国連と日弁連の両方から返事が来て、それでやっぱりジャニーズ問題は人権問題だったと確信を持つことができた。そのときはまだ当事者の会とかもつくっていなかったし、報道でもジャニーによる性加害がクローズアップされていて、被害者の人権問題として語られることはほとんどなかった。でも、精神的に病んで苦しみ、死んでしまった人が何人もいて、家族や親族、職場や学校にも影響する。完全に人権問題であると僕自身も考えを切り替えた」

と週刊実話WEBが報じている。

「おまえ、地獄で待ってろよ」芸能界引退・中居正広と故ジャニー喜多川氏“2つの性加害問題”の共通点/サマリー|週刊実話WEB「おまえ、地獄で待ってろよ」芸能界引退・中居正広と故ジャニー喜多川氏“2つの性加害問題”の共通点/サマリー|週刊実話WEB

編集者:いまトピ編集部