2025/2/25 20:24

『松屋』改良され劇的に

松屋

店舗内に設置されている注文用タッチパネル式券売機が使いにくいという不評が一部で広まっていた大手牛丼チェーン「松屋」。その券売機の操作性が改良され劇的に使いやすくなったと話題を呼んでいる。具体的にどのような点が変わったのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

店舗数ベースでは「すき家」「吉野家」に次ぐ牛丼チェーン3位で1082店舗(2024年12月現在)。主力メニューの「牛丼 並盛」(松屋は「牛めし」)の価格を比較してみると、松屋は430円(税込/以下同)、吉野家は498円、すき家は450円となっており、大手牛丼チェーン3社のなかではもっとも低価格となっている。
松屋といえば、根強い人気を誇る「オリジナルカレー」(480円)、「ごろごろ煮込みチキンカレー」(780円)といったカレーメニューに代表されるように、牛丼以外のメニューにも力を入れていることで知られている。一昨年から今年にかけての期間限定品を含めた新商品をみてみると、「ブラウンソースチーズハンバーグ定食」(1030円)、「シュクメルリ鍋定食」(930円)、「チーズシャリアピンソースハンバーグ定食」(1050円)、「リトアニア風ホワイトソースハンバーグ定食」(880円)などを相次いで投入。先月にはガチ中華メニュー「水煮牛肉~四川風牛肉唐辛子煮込み~」(1180円)がSNS上で「本当に辛い」「凄まじかった」「気楽に食べたら死ぬ」などと話題になったことが記憶に新しい。

松屋をめぐって何かと不評を買っていたのが、注文用タッチパネル式券売機だ。2年前にはネットニュースでもたびたび取り上げられるほど、そのユーザビリティが議論を呼んでいた。まず、当時の券売機の操作性について確認しておこう。

「たとえば牛めしのメニューを選んでいるときに他のカテゴリーのメニューのページに行こうとすると、どのボタンから行けばよいのかわかりにくい。最初のカテゴリー選択ページの上部には『カテゴリー選択後もタブで変更できます』と表示されものの、視線はすぐに中央部の大きな各カテゴリーを示すボタンに行くので、その文言に気が付く人のほうが少ないのでは。あるカテゴリーのメニューを見ている際、画面上部に他のカテゴリー名が書かれたボタンが表示されているものの、そこにあること自体に気が付きにくいのに加え、すべてのカテゴリーが表示されているわけではなくユーザーが自分で横にスクロールさせて表示させる方式なので、見たいカテゴリーが表示されていないと『行きたいカテゴリーが見つからない』となってしまう恐れがある。
また、丼もののサイズを選んだ後に遷移する画面で『ご一緒にいかがですか』という表示の下に『生野菜生玉子セット』など追加のセットメニューが並び、セットメニューを注文しない場合は何も選択せずに右下の『カートに追加』を押す必要があるが、セットメニューは追加しなくてもよいということに気が付かず何かを選んでしまう人もいるかもしれない。
このほか、各カテゴリーごとのメニュー表示画面で、右下の『次へ>』ボタンのすぐ下に十分なスペースがなく『全取消』ボタンがあるのも、押し間違って入力した情報をすべてクリアしてしまうという事態を誘発する懸念がある」(2023年5月4日付当サイト記事より)

そんな松屋の券売機が大幅に改良されたとして話題となっている。導入はまだ一部の店舗のみのようだが、どのような点が従来から変わっているのか。
まず最初にトップページに「店内」「お持ち帰り」という2つのボタンが表示される点は同じだが、大きく変わったのは「牛めし」「カレー」「丼」など計10個のメニュー・カテゴリが画面左側に縦に並んでいる点だ。「カートに追加」ボタンがなくなり、メニューを選択すると画面上部にそのイメージ画像が表示され、さらに自然に画面が下に遷移してライスの量や、つゆの量(「普通」「つゆだく」「つゆ抜き」)を選択できるようにもなっている。あとは「お会計」を押すだけというシンプルさ。さらにお会計のフェーズでも、従来はまず「dポイントカードをお持ちですか?」という画面に遷移し、「いいえ」を押す必要があったが、「お会計」を押すとすぐに「現金」「交通系電子マネー」「クレジット」「QRコード」「電子マネー」など各支払い方法のボタンが表示されるように変更されており、ユーザの操作回数が減っている。

大手IT企業のシステムエンジニアはいう。
「私はまだ使ったことがありませんが、動画を見る限り、全体的に従来の仕様の課題が一つひとつしっかりと解決されており、大幅に改善されているといえます。デザインや操作フローがゼロベースから設計の見直しがされており、従来のUXを踏襲していない点が成功の要因だと考えられます。それよって、ユーザが操作の途中で迷うということがなくなっています。また、ボタンを押してから次の画面に遷移するまでのレスポンスも速くなっている点も評価できます」

もっとも、券売機の改良にどこまでコストと労力をかけるのかは飲食店側にとっては難しい問題だという。
「飲食店の店舗でよくみられるタッチパネル式の券売機は結構な値段がするのに加え、ハードウェアなので一定の確率で故障は起きますし、システムの開発・運用・エンハンスのコストも重なってきます。なのでチェーン本部としては、顧客が自身のスマホを使ってモバイルオーダーのアプリで注文してくれる形態にシフトしていきたいわけです。ようは券売機は設置しなくて済むのなら、それに越したことはないわけで、その改良にどこまで本気で労力とコストをかけるべきなのかは難しいところです。松屋に関していえば、確かに券売機の操作性を改良することで顧客満足度を高める努力をすること自体は正しいことではありますが、原材料価格や人件費の値上がりでただでさえ経営が苦しいなか、全ての事柄で100点満点を取る必要はないですし、課題に優先順位をつけて取り組むということは経営的には正義ともいえます。

顧客がもっとも望んでいることは『安くて美味しい牛丼を食べる』ことであり、それ以外の点について、どこまで顧客の声に耳を傾けなければならないのかという問題でもあります。システム投資にお金がかかればチェーン側としてはコスト分を価格に転嫁していかなければならず、低価格を維持する代わりに顧客にはある程度の発券機の操作性の悪さを許容してもらう、という考え方も成り立つかもしれません」

とのことだとBusiness Journalは報じている。

松屋のタッチパネル式券売機が不評→劇的に改善…「牛丼を安く」優先の難しさ | ビジネスジャーナル松屋のタッチパネル式券売機が不評→劇的に改善…「牛丼を安く」優先の難しさ | ビジネスジャーナル

編集者:いまトピ編集部