2025/3/9 19:45

『富士通』廃止を発表

泥酔

7日、大手IT企業・富士通が新卒一括採用を廃止すると発表し、注目されている。すでに富士通では職務内容に応じて雇用契約を結び報酬などの処遇を決めるジョブ型採用を取り入れているが、これを新卒採用でも本格的に進める。毎年定めていた採用人数の計画を廃止し、一律初任給も廃止。高度な専門性を持つ人材には新卒でも初年度から年収1000円程度を支払う。この発表を受けてSNS上では、

<今まで新卒一括採用に救われてた層がどこにも就職出来なくなる。大卒ニート大量発生不可避>

<これが他の大手に波及すると一番ヤバいのは中途半端な大学で専門分野もなくサークル頑張りましたアピールしかできない学生。たぶんフリーターの道しかない>

<私文の学生が飲食のバイトリーダーやテニサー副幹事長の経験をガクチカで意気揚々とアピールし大手に滑り込めていた時代がついに終焉するのか>

などとさまざま反応があがっている。また、富士通といえば1990年代に大胆な成果主義を導入して失敗したという評価を社会的には受けており、今回の人事戦略の成否も注目されている。富士通の真の狙いは何か。また、もし今回の取り組みが他の日本企業に波及した場合、日本の新卒採用全体にどのような影響が出る可能性があるのか。



ニュースサイトで読む: https://biz-journal.jp/company/post_386884.html
Copyright © Business Journal All Rights Reserved.日本のIT業界を牽引してきた大手IT企業・富士通。ハードウェア、ソフトウェア、コンサルティングなど幅広い事業を展開し、国内ITサービス売上高シェアではNTTデータ、NECに次ぐ3位に君臨(2023年/ガートナー調べによる)。2024年3月期連結決算の売上高は3兆7560億円に上り、世界に12万人以上の従業員を抱える巨大企業だ。近年ではハードウェア企業からサービス企業への転換を進めている。

同社は人事制度の改革にも積極的に取り組むことでも知られてきた。2020年からジョブ型人材マネジメントを導入し、2026年度以降の新卒入社者にもジョブを取り入れ、一律初任給を廃止してジョブレベルに応じた処遇へ切り替えることを発表している。そして今回新たに、これまで日本企業では一般的だった新卒一括採用の廃止を発表。大半の新卒入社者は年収550~700万円程度となるが、高度な専門性を有する人材は年収1000万円程度になる。取り組みの背景について富士通は7日付リリースで次のように説明している。

<これまで、入社後数年間で行っていたような一部の定型的な業務はAI活用や業務プロセス改革によって見直し、成長意欲が高い若手人材が魅力を感じるような高いレベルの仕事に、入社後早い段階から就いてもらいます>

<入社前に1か月から6か月にわたり各現場へ入り込んでより実践的な業務に挑戦できる有償インターンシップの機会を増やし、ビジネスやデジタルツール活用などの基礎スキルの習得などに役立ててもらうともに、当社と学生の双方が入社後の働く姿をイメージできる機会を創出します>

 富士通の真の狙いは何か。大手IT企業管理職はいう。

「富士通をはじめとする日本の大手IT企業やメーカーは、新卒採用を文系・理系で分けて毎年4月入社で一括採用を行ってきた。文系に関していえば専門的な資格を持っている人材を除いて、大学時代に学んだ知識などはほとんど問わずに採用し、短期間の研修を施したのちに各部署に配属し、あとはOJTで育てていくというかたち。ベンダーではSE(システムエンジニア)職の採用でも文系出身者を多く採用し、基本的には入社後に業務に必要な専門知識・スキルを学ばせるというかたちだった。

 富士通が新卒一括採用をやめる背景は、こうした従来の『面倒で手間も時間もかかる』社員育成をやっている余裕がなくなってきた、ということだろう。つまり、『ウチに入りたいなら、ある程度の専門性や知識を身につけたり、経験を積んでから門を叩いてくださいね』というメッセージでもある。本音としては、どこの企業でも同じだろうし、現状ではむしろ体力的に余裕がない小さな企業ほど、採用時に専門性や経験を求めており、今後、他の大手企業でも広がるのは必至でしょう」

近年では通年採用をする企業は増えている。「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングや星野リゾートなど、大学の学年に関係なく選考を受け付けて内定を出す企業もある。では新卒一括採用が広まれば、新卒採用はどのように変わっていくのか。大手メーカーで人事業務経験のある管理職はいう。

「1990年代に富士通が進めた成果主義は失敗したものの、同社の目標管理制度は同業他社も含めて多くの企業で取り入れられ、その後、日本企業の成果主義的な制度の先駆けになった面があるのは確か。富士通は人事に関して他社に先行してアグレッシブな施策に取り組むことで知られており、今回の新卒一括採用も他社に波及していくと考えらる。

 長きにわたって続けられてきた新卒一括採用は制度疲労を起こしており、もう企業側にはのんびりと社員をゼロから育てていく余裕はなく、廃止が広がっていくのは必至だろう。すでにインターンシップの評価が事実上、採用と直結している企業も増え、起業の経験も選考基準に含まれることは当たり前になってきているが、学生側は採用選考において、ますます専門性やビジネス経験が問われることになっていく。よって、大学に入った瞬間から4年後の就職を意識した取り組みが必要となる」

前述のとおり富士通は1990年代に大胆な成果主義的な人事制度を取り入れたが、これにより社内のガバナンスが大きく揺らぐ結果に。2003年3月期には2期連続で最終赤字を計上し、この成果主義には失敗という評価がつきまとうことになった。

「富士通の目標管理制度は他の大企業でも広く採用され、部下が上司と面談した上で短期目標と長期目標を半期ごとに定め、期末に達成度を評価するというもの。特に日本の大企業では部下にとって上司の意向は絶対的である傾向が強く、上司にとっては部下の目標達成度が悪いと自身の評価にも響くので、どのような目標設定にするのかということに多大な労力と神経が注がれることになった。また、個人として定めた目標以外のことに力を入れることには後ろ向きになるため、会社全体でみると社員間・組織間の協力関係が薄れてパフォーマンスが落ちたり、問題が解決されないという現象も生じやすくなった。

 そして、どれだけ厳格な評価制度を導入しても、結局は上司の判断で『この部下は実際には目標未達だけど、評価を低くつけると自分の管理・指導責任を問われることになるので評価を高めにつける』『この部下はそろそろ昇進させる必要があるので、高めの評価をつける』といったことも行われるようになりがちで、社員の間で評価に関して不公平感や不満が広がるという現象がみられた。当時、富士通でも若手社員を中心に多くの退職者が出たことは知られている。

こうした失敗を教訓として、日本企業の成果主義的な人事評価制度は徐々にブラッシュアップが重ねられ、現在では柔軟な運用の重要性も意識されるようになっている」(同)

と、ビジネスジャーナルが報じた。

富士通の新卒一括採用廃止、狙いは専門性のない新卒採用削減?他社に波及は必至 | ビジネスジャーナル富士通の新卒一括採用廃止、狙いは専門性のない新卒採用削減?他社に波及は必至 | ビジネスジャーナル

編集者:いまトピ編集部