【発表】『チェーン店』初任給31万2000円、過去最高の賃上げに

ファミリーレストラン「ガスト」「バーミヤン」「しゃぶ葉」などを運営する、すかいらーくホールディングス(HD)は、正社員を対象として平均約6.5%、金額にして2万3375円の賃上げを4月に実施すると発表した。労働組合の要求に対して満額回答となった。同社に限らず外食企業の賃上げがラッシュと呼べる状態となっており、外食企業などの労働組合が加盟するUAゼンセンが2025年の春季労使交渉で定める6%という基準を、上回る企業が相次いでいる。転職支援サービス企業関係者は「これまで外食業界は賃金水準の低さや長時間労働などが原因で敬遠されがちだったが、待遇や労働条件は他の業界に比べて遜色ないレベルになりつつある」「実力次第でポジションも賃金も上がる傾向があり、魅力ある職種ともいえる」という。各社の賃上げ状況と業界のこれからについて追ってみたい。
すかいらーくHDの賃上げ率は、定期昇給とベースアップの合計であり、2014年の再上場後としては最大の賃上げ率。対象は「すかいらーくHD」および「すかいらーくレストランツ」の正社員約4340名。同社は賃上げの理由について次のように説明している。
「・物価高騰の中、従業員の生活水準の向上
・賃上げによる経済の好循環
・人財による成長こそが最大の成長戦略と考え、人的資本投資を積極化」(プレスリリースより)
同社に限らず、外食各社は競うように賃上げを決定している。
「すき家」を運営するゼンショーHDは正社員約1300人を対象に、4月に平均11.24%の賃上げを実施。金額としては4万7390円であり、同社としては過去最高の賃上げ額となる。新卒初任給もこれまでより3万4000円引き上げ31万2000円(大卒)とする。
「松屋」を運営する松屋フーズHDは正社員約2000人を対象に平均7.41%引き上げる。新卒初任給は1万5000円引き上げて26万5000円(大卒)にする。
「モスバーガー」を運営するモスフードサービスは正社員と嘱託社員など約650人を対象に平均5%引き上げる。新卒初任給もこれまでより7500円引き上げ24万7500円とする。
日本マクドナルドHDは正社員約2500人を対象に平均4%引き上げる。新卒初任給も1万円引き上げ27万円とする。
このほか、昨年には「丸亀製麺」を運営するトリドールHDは正社員(子会社含む)約1500人を対象に過去最高の10%の賃上げを実施。同年には吉野家HDも正社員791人を対象に平均8.91%の賃上げを行い、新卒初任給を1万4771円引き上げて23万2500円(大卒)としていた。
飲食業界は他業界と比較して賃金水準が低いとされてきた。厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によれば、飲食業界の平均年収は259.5万円であり、業界全体の318.3万円を下回っている。低賃金に加えて長時間労働が常態化しているというイメージも影響して、業界全体が慢性的な人材確保難となっているといわれてきた。外食チェーン関係者はいう。
「厚労省のデータには個人経営の小さな店舗の賃金も含まれており、大手チェーンでそれなりのポジションについていれば、年収500~600万円台には乗ってくるイメージです。大手のメーカーや金融、不動産、ITの企業よりは低いものの、いわゆる大企業の賃金水準のゾーンには入ってくるため、突出して低いという金額ではないでしょう。福利厚生も普通の大企業並みには充実しており、大手チェーンであれば日本人としての平均的な水準といってよいと思います。
また、長時間労働という面では、確かに10年くらい前まではそうした傾向があったことは否めませんが、近年は深刻な人手不足と人件費高騰で急速にDX化が進んでおり、外食各社はできるだけ人手と労働時間を減らす努力をしています。日本全体が人手不足に陥っていて、社員側は『長時間労働を強いられるくらいだったら、さっさと別のもっと待遇の良い会社に転職する』となって離職してしまうため、会社側としても労働時間の短縮化というのは重要な経営課題としてとらえています。ですので、大手に限っていえば『外食業界は低賃金で長時間労働』というのは、もはや過去のものとなりつつあります。
飲食業界は実力がある人材はどんどんポジションも賃金も上がっていきやすいという傾向があるので、やる気があってこの業種と相性が良い人にとっては、非常に魅力的な業種だといえます」
と、ビジネスジャーナルが報じた。
編集者:いまトピ編集部