「初週売上9.4万部」爆死では?...限界を示した「失敗ではない」

乃木坂46の次世代エース・井上和の1st写真集『モノローグ』が、4月22日にリリースされた。初版20万部という大型展開でスタートし、初週売上は約9.4万部(オリコン調べ)。出版不況の現代としては十分すぎる数字だが、アイドルファンからは「爆死では?」という厳しい声も見られる。
しかし、現代のアイドルビジネスはすでに大きく変化しており、D2C(Direct to Consumer)の台頭や、新自由主義的な市場構造の中で、従来の“売上=成功”という評価軸が揺らいでいるのが実情だ。
井上の写真集はイタリアでの撮り下ろし、美麗なビジュアル、豪華仕様と「ザ・坂道写真集」とも言える内容だった。
にもかかわらず、「期待より売れなかった」「爆死では?」という声が上がる背景には、過去の実績との比較がある。
たとえば、白石麻衣は初動約10万部で累計30万部超、齋藤飛鳥は初動9万部で累計20万部以上という数字を出している。
そうした“黄金期メンバー”の実績と比較されることで、井上の数字が過小評価されてしまっている側面があるだろう。
ここで注目したいのは、現代の写真集市場を取り巻く構造の変化である。
D2Cとは、中間業者を通さずにタレントや企業がファン・消費者と直接つながりながら商品を届ける販売スタイルのことを指す。
以前は「出版社→書店→ファン」という流れだったが、現在は「タレント→EC→ファン」といったダイレクトな接続が主流になってきている。
この変化によって、「何部売れたか」という数量よりも、「ファンとどれだけ濃密な関係を築けているか」という質が重視されるようになった。
また、芸能界においても新自由主義的な構造が強まりつつある。
新自由主義の特徴は、自己責任の原則、自己プロデュース能力の重視、市場原理による競争、そして公的支援の縮小といったものだ。
これがアイドル業界にも浸透しつつあり、「売れなければ本人の責任」といった空気感が強まっている。
井上も、Xフォロワー数が約13.5万人であるにもかかわらず、初版20万部を発行したという事実自体が、旧来的な“マス向けモデル”の名残といえる。
こうした時代の変化の中で台頭しているのが、D2C型の新興アイドルグループである。
現在の女性アイドルグループの中には、写真集という形式にこだわらず、オンラインくじや会員制EC、デジタルZINEや限定フォトブック、さらには配信連動イベントやリアルチェキ会といった手法で結果を出している。
どの手法も共通しているのは、「ファンとの接続性」が強く、少数のコアファンから高い単価で収益を得ることに成功している点である。
結論として、9.4万部という数字は“失敗”では決してない。むしろ、D2C時代におけるマスモデルの限界を示した象徴的な事例である。
坂道写真集ビジネスは、坂道写真集ビジネスは、今こそ“誰にどう届けるか”を再設計するタイミングに差し掛かっている、と週刊実話WEBが報じた。
編集者:いまトピ編集部