『ニトリ』vs『ヤマダ』か

ヤマダHDは売上ベースで家電量販店業界トップ。対するニトリHDは2009年に家電のPB事業に参入し、22年にはエディオンと資本業務提携を開始してノウハウを蓄積。PR家電の売上高を2032年までに全世界合計で2000億円規模にする目標を掲げている。27年頃までに国内の全店舗に家電専用売り場を設置する。
現在、家電量販店業界では激しい競争が繰り広げられているが、なぜニトリHDは同市場に分け入って売上規模を大きく拡大させようとしているのか。流通アナリストの中井彰人氏はいう。
「家電量販店業界も家具販売業界も市場の寡占化が進んで成長余地が限られるなかで、各社は家回り全般の需要を取っていく方向になり、お互いの領域を侵食し合うという流れになりつつあります。要は双方ともに覚悟の上で需要の取り合いを始めたということです。以前であれば消費者の側にも『家具を買うなら家具販売店』『家電を買うなら家電販売店』という意識がありましたが、店側としては『次いで買いで別のモノも買わせたい』という考えがあるわけでして、たとえばヤマダデンキは家電製品以外にも電気自動車、家具やリフォームまで手掛けるようになりました」
こうしたニトリHDの動きが、家電量販業界に業界再編などの新たな動きを生む可能性は考えられるか。
「十分に考えられます。これまで家電量販店業界では、大手が中小のチェーンを買収して寡占化が進んできましたが、近年では上位数社がシェアを占めるかたちで大きな変動は起きておらず、かつ都市部と地方である程度、すみ分けができています。ですが、たとえばビッグカメラの牙城だった東京・池袋駅前にヨドバシカメラが大規模な店舗を出店することになり、仮に勢いづいたヨドバシカメラの売上高が現在の7000~8000億円から大きく伸びて1兆円に近付いてくるようなことになれば、トップのヤマダも安寧としていられなくなります。
そして上位企業のシェア争いに変化が出てくれば、下位企業の間でも提携や買収・経営統合の動きが出てきて、そうしたなかでニトリHDの家電事業が1000~2000億円規模になって徐々に他の家電量販店の売上を奪うようになってくれば、大手に比べればまだ売上規模は小さいものの、無視できない存在になります。こうした流れで、ニトリHDの動きが業界再編につながるという可能性はあるかもしれません」(中井氏)
では、ニトリHDの家電事業が大きく成長する可能性はあると考えられるか。また、何が成否のカギとなってくるのか。
「その可能性は高いと感じます。ニトリHDがここまで多く成長した要因としては、2000年代頃から女性が自分で車を運転してロードサイドの店舗で積極的に買い物をするようになったという社会的な変化があげられます。それまで車の運転役だった『お父さん』は買い物についてこなくなり、家具でも買い物目線がより女性目線になってくる。
そこでニトリは店舗の1階にキッチン用品やインテリア雑貨などの小物類をメインに並べて、色も統一してキレイな売り場をつくり、女性の集客を意識した店舗づくりを行っています。大型の家具や家電は数年に1回くらいの頻度でしか購入しませんが、女性客が頻繁にニトリの店舗を訪問して、そのたびに低価格の家電をちらっと目にしていると、いざ家具や家電を購入するタイミングがくると『安いしオシャレだからニトリでいいじゃん』となります。
すべての消費者が細かく機能や性能、コスパを検証するわけではないので、そういったかたちで普段から親しみを持つニトリで家電も買うという行動が広まっていくかもしれません。一方、家電量販店はこれまで、どちらかといえばメイン顧客層が男性だったこともあり、女性に選ばれやすい商品の開発というのは得意ではない面があります。こうした要素を踏まえると、ニトリHDの家電事業が大きく成長する可能性というのは高いのではないでしょうか」
とのことだとBusiness Journalは報じている。
編集者:いまトピ編集部