2025/7/9 14:47

『4月期ドラマ』価値観を訴える作品「幅広く支持を得た」

テレビ

今期は夫婦のドロドロや狂気的な愛欲ドラマが注目されがちだったが、幅広く支持を得たのは“穏やかさ”や、いろいろな生き方があってもいいと背中を押してくれるようなドラマ。2025年の4月期ドラマで今期面白かった・心に残ったドラマを吉田潮氏と木俣冬氏、2人のドラマ評論家にそれぞれ5本選出してもらった。(前後編の後編)

【もどかしい恋がムズキュン『波うららかに めおと日和』(フジテレビ系)】

 昭和11年を舞台に、江端なつ美(芳根京子)と帝国海軍に勤める江端瀧昌(本田響矢)が交際ゼロ日婚からスタートする、歯がゆくも愛らしい“新婚夫婦の甘酸っぱい時間”を丁寧に描いたハートフル・昭和新婚ラブコメ。

木俣冬(以下、木俣) 昔を舞台にしたドラマを現代的な価値観や演技に寄せて現代の若者にアピールすることが少なくない昨今、あえて、昔はこうだったのではないかという奥ゆかしさに徹底したら、逆に新鮮に。俳優たちも等身大の人物を演じるより、今どきないでしょうというような、極端な言動を演じることが挑戦的でおもしろいのではないでしょうか。ただ、後半、これでもかと清純さや奥手を打ち出してきて、ちょっとお腹いっぱいになりました。

【一周回って新しい?『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)】

 小泉今日子&中井貴一のダブル主演で、古都・鎌倉を舞台に、テレビ局プロデューサーの女性と、鎌倉市役所で働く男性公務員の恋を描いたロマンチック&ホームコメディ。笑えて泣けて、ちょっとだけ恋愛ありの主人公たちの日常が描かれた。人気コンテンツの3作目とあって注目度も高く、TVerのお気に入り登録数は6月30日時点で121万と4月期ドラマのトップ、見逃し配信は累計3000万再生突破。

木俣 2010年代に放送された人気シリーズの第3作で、元祖何も起こらないドラマ。ただ時代が変わり、テレビ局のプロデューサーという花形職業だった主人公が還暦間近で、職場での居場所がなくなりかけている姿を描きました。

 テレビの時代が終わりかけているいまの雰囲気も手伝って、主人公が時代の変化に直面しているところはリアルでした。それでも主人公はバブル世代で貯金も退職金もたぶん潤沢で、どこまでも個人の生きがいを追求し続けられて、社会的な切実さはやや希薄。そこが若い世代にはピンとこないようで、むしろファンタジーとしては良作という声も聞きます。

【家事という終わりなき仕事『対岸の家事~これが、私の生きる道】

主人公は2歳の娘の育児と家事に奮闘する専業主婦(多部未華子)。働くママや育休中のエリート官僚パパなど、価値観がまるで違う「対岸にいる人たち」と、それぞれが“家事”を通じて繋がり、動き出す人生を描く。

吉田 多部未華子が自ら選んだ専業主婦の役、江口のりこがバリキャリから産休育休とって、ほぼワンオペのワーママ役、ディーン・フジオカが育休中のエリート厚労省官僚役。立場の違う3人が、手に手を取り合って……というほどの連帯感はないけれど、お互いの境遇をちゃんと理解し合って、認める構図がよかったなと思います。

 ま、現実はそう簡単には相互理解をえられず、メコン河を渡れるはずもないのだけど、それぞれの苦悩を3人の役者が丁寧に演じきった印象です。

 うつ病一歩手前、育児ノイローゼ一歩手前など、それぞれの“ゲームオーバー”のシーンがシビアで、自分もぼんやりと何かを眺めているようで何も見ていない人を町や公園で見かけたら、想像力を働かせよう、と思いました。育児も介護も家族問題でも、他人には到底わからない闇があるんだよな。『みんな違ってみんな大変』は心に留め置きたいメッセージです。とサイゾーウーマンは報じた。

【吉田潮&木俣冬】2025上半期ドラマを総括!(後編)、そんな生き方もあっていい 専業主婦、複数恋愛…さまざまな価値観を訴える作品群 | サイゾーオンライン/視点をリニューアルするニュースサイト【吉田潮&木俣冬】2025上半期ドラマを総括!(後編)、そんな生き方もあっていい 専業主婦、複数恋愛…さまざまな価値観を訴える作品群 | サイゾーオンライン/視点をリニューアルするニュースサイト

編集者:いまトピ編集部