メジャーで夢破れ、DeNA入りを決断

メジャーリーグでの夢破れた藤浪晋太郎が、DeNA入りを決断した。かつて球界を騒がせた豪速球右腕は、NPB時代から制球難と死球の多さで知られてきた。特に右打者への抜け球は顕著で、頭部への死球が少なくなかったことから、各球団の対策は異例ともいえるほど徹底していた。
その藤浪が横浜ブルーのユニフォームに袖を通すことになれば、セ・リーグの他球団は再び「右打者回避」に頭を悩ませる日々が始まるかもしれないとアサ芸プラスが報じた。
事実、過去には明確な「藤浪シフト」が存在した。象徴的だったのはヤクルトの対応だ。2020年7月、神宮球場での阪神戦。この日、ヤクルトは、中軸を担う右打者エスコバーらをスタメンから外し、左打者をズラリと並べる「ほぼ全員左打線」を敷いた。
異例の布陣の背景には「過去の因縁」が存在する。すなわち、2016年の谷内亮太の死球骨折、そして顔面に死球を食らった2017年の畠山和洋の件だ。
「ちょっといろいろなことがあって…」
試合後の高津臣吾監督はそう語るにとどめたが、意図的な編成であったことは明らか。球界でも「藤浪の登板日は右打者を使わないのが暗黙のセオリー」とさえ囁かれており、死球回避が一種の戦術として浸透していた。
広島時代の鈴木誠也が見せた「ヒヤリハット」の場面も印象深い。藤浪との対戦で打席に構えていた鈴木は、藤浪が投球モーションに入った瞬間にバッターボックスの外へスッと移動し、間合いを外す動きを見せた。
その仕種はまるで危険を予知していたかのようであり、実際に投球はインコースに大きく食い込むように外れた。普通に打席に立っていれば、150キロ超の速球が直撃していたかもしれない。鈴木は「完全に読んでいた」のであり、死球を未然に防ぐ「防御意識」の表れだったのではないか。
その危険が再び…となれば、対戦するセ・リーグ球団にとっては、決して軽視できる話ではない。が、それを知ってか知らずか、DeNAは「再建プラン」を準備していた。萩原龍大チーム統括本部長は7月12日に、こう言っている。
「藤浪選手が望むのであれば、我々にもそういった(AIチームなどの)強みはあると思っている。対話しながら進めていければ」
つまりAIやデータ分析を活用したものであり、藤浪の制球難やメンタル面の不安定さにもアプローチ可能。「再生工場」さながらの措置である。
これが奏功した場合、対戦する球団はさらに「別の悩み」を抱えることになる。投げてみなければわからない制球難に手を焼いてきた藤浪がもし完全再生し、ストライクゾーンでも勝負できるようになったら…。
そもそも160キロの速球を持つ素材自体は球界屈指の一級品であり、DeNAがその能力を最大限に引き出すことに成功すれば、セ・リーグの台風の目となりうる。
その時、打席に入る右打者はやはり「ヒヤリ」を念頭に、身構えながら対峙するのか、それとも一転して要所にズバッと来る剛球に目を丸くするばかり…となるのか。
編集者:いまトピ編集部