5000店舗予定『大手スーパー』、セブンを脅かす

イオンが主に首都圏で展開する「まいばすけっと」の店舗数は1200超であり、2030年度までに2500店舗、将来的には5000店舗にまで増やす計画を持っている。ちなみにコンビニ業界3位のローソンの店舗数は約1万4000店。「まいばすけっと」の売上のうちイオンのPB「トップバリュ」商品が占める割合は20%に上るのも特徴であり、生鮮食品や弁当・総菜類、日用品など、扱う商品カテゴリは一般的なスーパーと変わらない。
「DX導入を進めることでレジを無人化したり、スーパーでみられるバックヤードやコンビニでみられる調理コーナーを設置せずにセントラルキッチン方式を導入することにより、徹底した店舗運営コストの低減を図ることで、低価格を実現している」(小売りチェーン関係者)
「まいばすけっと」の強さの理由について、流通アナリストの中井彰人氏はいう。
「生鮮食品は集中センターで処理した後、店舗に届けて陳列するだけの形態にすることで、店舗内で加工をする人を不要にしました。徹底してコストダウンしたスーパーとして成立するようになっています。ITで管理された密集した店舗網で短時間での配送によって鮮度を落とさないことに成功したということです。
価格についていえば、コンビニどころか一般のスーパーやディスカウントストアなどよりも安くなりつつあります。スーパーでもすごい勢いで値上がりしている一方、イオンのトップバリュはそもそもナショナルブランドの商品より安い上に、価格据え置きの路線を取っているため、相対的に『まいばすけっと』の価格の低さが際立つようになっています。以前からローコスト運営のためにさまざまな実験的な取り組みをしてきたわけですが、スーパーなのに数人の店員で運営して、会計もセルフレジなので極めてローコストで運営できています。それによって商品の価格を上げなくても運営できる体制を確立し、かつ店舗数が増えて規模が大きくなったことで『規模の経済』が働いて、チェーン全体としてのコスト率が低いスーパーとして成立し始めています。
スーパーは集客のために頻繁に陳列棚に変化を加えていますが、『まいばすけっと』は効率化を優先させて品揃えを絞り込んでいます。以前であれば消費者は店の品揃えの豊富さをかなり重視していましたが、長きにわたり実質賃金が減少を続けて家計が苦しくなった結果、とにかく安いものを追い求める人の割合が増えたというのも、『まいばすけっと』にとっては追い風です」
PBの売上比率をさらに引き上げ
では、「まいばすけっと」はセブンを脅かす存在になるのか。
「これまでは日本で最も人口が集中している東京23区、川崎、横浜あたりに1000店舗ぐらいを密集させて、物流の効率を上げてきました。現在では少しずつ外に広げようとしています。神奈川でいうと座間、東京であれば立川、国立など、鉄道線沿いではあるものの、少しずつ外に広げていっています。関西にも首都圏と似たようなエリアはありますし、コンビニなどの跡地を狙えばかなり用地は確保できるはずです。
全国的に見てもマーケットはまだありますが、人口密度が低くなると売上が減ってしまう可能性があるので、『まいばすけっと』が今、実験しているのは、全体の効率をいかに上げるのかという点です。コストダウンをさらに進め、PB比率をさらに上げた店をつくろうとしています。PBは、価格は低いものの粗利率は3割近くあるとみられ、売上が下がったとしても利益率が高い分、採算が取りやすくなります。PBの売上比率を5割くらいに引き上げた店舗を実験的に出したという報道も出ています。
近い将来、コンビニを脅かす存在になってくるでしょう。『まいばすけっと』の店舗はセブン-レブンのすぐ近くにあることが多いですが、これはセブンとの競争に負けたコンビニ店舗が撤退した跡地に『まいばすけっと』が出店するケースがこれまでは多かったということだと考えられます。居抜きだとちょうどいいサイズの箱なので、そのままサッと入れるということで、狙って入っているのでしょう。
実質賃金の低下や物価の高騰で消費者の懐が厳しくなり、割高なコンビニで買い物をすることを躊躇(ちゅうちょ)する人は確実に増えています。そうしたなかで『同じような商品を比べると、コンビニより全然安いから、まいばすけっとに行こう』となる人が増えるのは当然です。イオンもミニストップというコンビニを展開していますが、店舗数は極めて少なく、バッティングしにくいので、あまり気にすることなく“コンビニキラー”のような動きをできるのもイオンの強みでしょう」(中井氏)
ビジネスジャーナルが報じた。
編集者:いまトピ編集部