2025/11/23 11:30

『TVer』再生数5.4億回「過去最高」

TVerAmazon

民放公式テレビ配信ポータル「TVer」が2015年10月26日にローンチしてから10年。気になるテレビ番組は、後からTVerで見ればいい――という空気はもはや当たり前になり、2025年度10月には月間動画再生数5.4億回(TVer DATA MARKETING調べ)と、過去最高の数値をマークした。

背景には、『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)や『良いこと悪いこと』(日本テレビ系)などドラマの見逃し配信が好調だったことにくわえ、他カテゴリでもコンテンツが充実していたことや、ニーズを掴んだ配信の工夫がある。


たとえばバラエティでは、サービス開始10周年を記念して『水曜日のダウンタウン』(TBS系)の過去回アーカイブを配信。また、加熱するお笑いブームのなか、『キングオブコント2025』(TBS系)は昨年比約133%の再生数をマークした。

 アニメでは、『SPY×FAMILY』Season 3(テレビ東京系)、『「魔法少女まどか☆マギカ 始まりの物語/永遠の物語」TV Edition(狩野英孝解説付き)』(TBS系)が話題を集め、映画『秒速5センチメートル』公開を記念して配信したアニメ版(2007)は13日間で100万回再生を突破。“見逃し”の保管庫としてだけでなく、アーカイブや解説、さらには“今求められるもの”に柔軟に対応する姿勢、使いやすいUIの秀逸さなどが総合的に数字を積み上げた。

ライフスタイルはどんどん“スマホで完結”させる時代に突入。TVerは堅調な支持を得て、今や発信する側が積極的に見逃しでも見られることをアナウンスしている。スマホの普及に、テレビ局も姿勢を変えざるを得なくなったのだ。

「元来テレビ番組は、録画をしておかない限り2度と見ることができない“ワンチャンス”で、それこそが価値でした。ただ、時代とともにその場に縛り付ける視聴スタイル自体が嫌がられるようになりました」

 SNSの浸透も、局に気づきを与えた。

「番組がSNSで評判になってトレンドにあがれば、新規層を呼び込むチャンスが生まれます。事後的にでも見てもらえば、番組のファンを増やすことができる。これは見逃し配信があってこそ成立する流れです」

 コンテンツを(実質無料で)垂れ流すことに慎重だった各局だが、「公式」として発信することは、ネット上で大きな力をもつ。TVerは“違法アップロード対策”としても機能するのだ。

「基本的に、ネットに多数あがる違法動画をどうにしかしようと思ったら、一つひとつ手作業で削除要請する必要があります。その点公式としてTVerに映像を提供すれば、そうした違法コンテンツへの流入を防止できる期待がありました」

さまざまな事情で番組にアクセスできない人々をすくいとるTVerの存在は、地方でその真価を発揮した。電波の都合上、地方ではキー局系列の番組でもサービスエリア外となるケースが存在するが、TVerがあれば放送網は関係ない。地方在住の視聴者には、「リアル放送では見られなくても、TVerでなら見られる」番組が増えたうえ、鎮目氏は、地方局にとっても、全国に番組を届けられる活力となったことを指摘する。

昨今、地上波の番組においては「とにかく制作費が削減される」ことが頻繁に叫ばれるが、TVer経由をはじめとしたネット広告収入は、局を潤すのか。

「かつてのテレビ局は地上波のCM広告料が経営の柱となっていて、今、その足元が揺らいでいるのはたしか。ですが、現在はIPビジネスをはじめ、コラボ商品、イベント施策など、一つのコンテンツで多様な稼ぎ方を模索する方向にシフトチェンジが進んでいます。

 そうしたとき、TVerでの実績は、局にとってもビジネスを生むきっかけになりえます。たとえば『夫が寝たあとに』(テレビ朝日系、2023年10月~)は、TVerのバラエティランキングで深夜番組では異例の1位を獲得するほどの人気となり、1000人規模の劇場でリアルイベントを開催するまでになっています」

 それではTVerが好調であることは、局にとって明るいニュースと言っていいのか。

「(明るいと)言っていいと思います。もちろん、世界を相手に勝負している配信サービスと比べると、番組制作費には限界があるでしょう。ただ、これまでテレビがつまらないのはコンプラのせいとか、予算のせいとか制作側が口にしてきたものですが、一つ大きな要素として、視聴スタイルの問題が “テレビ離れ”を呼んでいたという事実が浮き彫りになったともいえる。今こそ地上波は、おもしろい番組をちゃんと作れるということを示す時かもしれません。今後はTVerを上手に営業活用しつつ、制作費をかけるもの、かけないものの分配を考えて番組作りをしていくことになるでしょう」

 2025年の「新語・流行語大賞」には“オールドメディア”がノミネートされるこの時代。テレビの常識を塗り替え、新たなスタンダードになりつつあるTVerは、業界にとって復活の兆しになるか。とサイゾーオンラインは報じた。

「TVer」再生数が過去最高の5.4億回、見逃し配信はテレビ離れを食い止めるか | サイゾーオンライン/視点をリニューアルするニュースサイト「TVer」再生数が過去最高の5.4億回、見逃し配信はテレビ離れを食い止めるか | サイゾーオンライン/視点をリニューアルするニュースサイト

編集者:いまトピ編集部