栃木県那須町で焼けた夫婦の遺体が見つかった事件や闇バイトなどの背景にあると指摘される、匿名・流動型犯罪グループ、通称「トクリュウ」の存在。SNSなどの呼びかけで集まっては解散を繰り返し、犯罪に及ぶ集団のことで、常習的に特殊詐欺・窃盗・強盗などを行うことが特徴だという。

【映像】「兄貴分の名前は言えない」 那須の遺体焼損事件の容疑者

 貧困や劣悪な家庭環境が原因ではという声がある一方で、そうした中でも犯罪に手を染めない人もいる。その関係について、『ABEMA Prime』で議論した。

■「目先の欲だけで凶悪犯罪をしてしまう怖さ」

 トクリュウの特徴について、元埼玉県警で刑事コメンテーターの佐々木成三氏は「関係性が希薄だということ。匿名同士、名前も年齢も住所もわからない。同じグループでも実行犯がそれぞれ変わってくる」と述べる。

 関係が希薄であるがゆえに、警察も実態の把握が難しいという。「トクリュウで捕まるのは末端の人物、つまり実行犯だ。受け子は捕まえられるが、そこから指示役までいくのが難しい。SNSの通信技術の向上も大きな要因だ」。

 また、「特に闇バイトに関しては、“銀行員のバイトだ”などと騙す。“許可をもらっている高齢者の方から、今日休みの佐々木さんの代わりにキャッシュカードを預かってきてくれ”と。無知な高校生はアルバイトだから詐欺ではないんだと、日当15万円もらえるのだったらやろうかなと加担してしまう人も事実いる」と付け加える。

 そうした現状に対して佐々木氏は「全く自分の動機がなく、被害者の事も知らない」とした上で、「捕まるリスクよりも高収入、お金がもらえるという目先の欲。それだけで凶悪犯罪をしてしまうのはかなり怖い現象だ」と警鐘を鳴らした。

■非行少年の検挙数は減少も凶悪化?環境は影響する? 

 犯罪に走るのは環境が影響するのか。「令和5年版 犯罪白書」によると、少年院在院者の保護者は両親が36.1%、ひとり親が39.0%、その他が24.8%。また、身体的虐待が61.0%、親の志望・離婚が60.6%、心理的虐待が43.8%など、幼少期に過酷な体験をしている割合は多い。

 少年非行論などが専門の佛教大学の作田誠一郎教授は、家族関係の希薄化が問題だと指摘。「非行傾向が低い子でさえSNSで闇バイトに募集している」「貧困でなく両親がいる子どもでも、ちょっとした借金等の相談を親(大人)にできない。1人で解決しようとして騙される」としている。

 佐々木氏は、「価値観や社会観をいつ是正できるかというきっかけではないか。非行少年に圧倒的に出るのは、認知能力(の低さ)だ。読み聞かせができないとなってくると、学校の授業などが理解できない。学校でどんどん孤独になっていく中で、コミュニティを作れるのは自分と同じレベルの子たち。そこで“やめなよ、危険だよ”と言う人がいない社会観に流されていくメカニズムはあるのでは」との見方を示す。

 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「能登の小中学校に行ったが、茶髪は1人もいない。コンビニに行ったら、東京ではついている雑誌のカバーがない。理由を聞くと、『悪いことだからしない』と。要はみんな知り合いで、茶髪にしたら“何してるの?”と言われ、立ち読みしたら注意される。逸脱が起こらないような社会になっているのでは」と述べた。

 非行少年の検挙・補導人数は年々減少しており、2013年は約7万人だったのが、2022年は2万912人になっている。しかし、佐々木氏は「昔は初期型非行、万引きから始まるものが圧倒的に多かった。実は今、非行少年の凶悪犯罪の割合は伸びている」と説明。「上層部への突き上げが難しい中で匿名性のグループはなくならないと思う。検挙に向かうよりも、闇バイトに手を出さない少年を育てていくことが大切だ」と指摘した。(『ABEMA Prime』より)