■気を紛らわすために、音楽や動画をつけながら勉強してもよい?
人間の行動は、周囲の環境によって大きく左右されます。大人でも人によって仕事がはかどりやすい場所と、はかどりにくい場所がありますよね。例えば、在宅ワークだと仕事がはかどらないという人もいるでしょう。

子どもも同じです。勉強がはかどるためには、その環境を整える必要があります。

このときに気をつけなければいけないのが、勉強がつまらないからと気を紛らわすために、テレビやスマホの動画を見ながら勉強する子がいることです。これは勉強がはかどるための工夫としてよい方法でしょうか?

多少学習効率が下がったとしても、勉強が嫌いでなかなか手がつかない子だとしたら、やらないよりはマシかもしれません。あなたはどう思いますか?

これについて仙台市教育委員会が、仙台市の小中学生約7万人を対象にして何年にもわたる大規模調査を行いました。この子どもの学力と学習習慣に関する調査結果の分析によると、「ながら勉強」をしている子たちは、ハッキリと成績が悪いことがわかりました。

しかも、たくさん勉強していても成績が悪いのです。

例えば、動画を見ながら勉強している子は、1日の勉強時間が3時間以上あっても全教科の平均偏差値が50を超えませんでした。それに対して、ながら勉強をしない子たちの成績は、1日の勉強時間が30分未満でも偏差値50を超えていました。

ながら勉強だと、3時間以上勉強しても、ながら勉強をしない勉強時間30分未満の子に成績で負けてしまいます。恐ろしい学習効率の悪さですね。

音楽など動画以外のながら勉強も同じくダメでした。ながら勉強は絶対にやめて、勉強だけに集中した方がよいことがわかります。

■スマホがそばにあるだけでも学習効率が落ちる
もうひとつ注意してほしいことがあります。

それは、ゲームや動画のアプリなどを使用しなかったとしても、スマホがそばにあるだけで学習効率が落ちるということです。友達からLINEなどのアプリでメッセージが飛んでくると、その通知で音がしたり光ったりすることにより、集中力が落ちるのです。

東北大学加齢医学研究所が、実験でこのことを確認しています。大学生に集中力を必要とする作業をしてもらったときに、スマホを視界に入らない背後に置いてもらい、「課題中はスマホを触ってはいけません」と指示。そして、作業中にLINEの通知がきたらどうなるかを観察しました。

音が鳴ると気になって集中力が下がるのは当たり前なので、アラーム音が鳴った場合とも比較してみました。

その結果、通知音が鳴ったときは、アラーム音が鳴ったときと比べても、さらに作業の速さ・正確さが落ちていました。通知音がすると、気になってしまって作業が手につかなくなることがよくわかります。また、インスタントメッセージの使用時間とテストの成績の関係の調査でも、使用時間が長いと成績が低いという傾向がありました。

勉強中にスマホを使わなくても、通知音がするだけで勉強がはかどらなくなるというのは、子どもにとっては意外なことです。悪気なくスマホをそばにおくだけで、勉強の集中が妨げられてしまい、せっかく頑張ろうという意欲があるのに時間と労力を無駄にしてしまっているのです。

もったいないですね。ですから、勉強中はスマホの電源を切るようにさせましょう。このときに電源を切るように親が「指示・命令」をしても、本人に納得感がなければ、子どもは言うことを聞きません。隠れて使用したり、反抗してケンカになったりするだけです。

こうしたデータを見せて、なぜそうした方がよいのかを理解させ、本人が自発的に行動するように導いてあげてください。

菊池 洋匡(中学受験ガイド)