人手不足で困っている農家などと作業を手伝いたい人をつなぐ民間の事業「おてつたび」が県の実証事業として昨秋から行われ、最終的に県外の計20人が手伝いに当たった。今後は農家の課題解決だけでなく、群馬ファンが増えていくことも期待されている。

 おてつたびは、東京都渋谷区の株式会社「おてつたび」が実施している事業で、「お手伝い」と「旅」を掛け合わせている。季節的に人手が必要な農家などと、手伝いをしたい人の双方が同社に登録。採用されて現地に行く交通費は自己負担だが、宿泊費はかからず、報酬も支払われる。

 県は、民間事業者との協業により持続可能な農業を確立することを目指す「ぐんまAgri×NETSUGEN共創事業」に取り組んでおり、昨年度から実証事業を始めた。おてつたびはその一つで、農家の経費を一部負担した。

 今回手伝いを受けたのは前橋市、沼田市、みどり市、みなかみ町、川場村、昭和村のリンゴ園やこんにゃく園など。作業は昨年9月から今年1月までの間に行い、長くて半月、短い場合だと数日間だった。

 参加したのは10都道府県の計20人。東京都の4人、埼玉、千葉両県の3人が多く、北海道や沖縄県など遠方の人もいた。年代は20代から60代とさまざまだ。

 このうち大阪府の大学生上村慧さん(22)は、昨年9月下旬から10月半ばまでの間、川場村のコメ農家で作る株式会社「雪ほたか」で、刈り入れを手伝ったり精米したコメを袋に入れたりといった作業を行った。

 将来の夢は農家だという上村さんは、おてつたびについて「短期間なので学生でも参加しやすい。農家になろうと思っているので勉強になるし、いろいろな出会いがあることが魅力」と話す。

 雪ほたかの星野孝之専務(51)によると、毎年秋の刈り入れ時に一時的に人手が必要となるが、手伝ってくれる人を村内や近隣地域で探すのは難しくなってきているという。今回、上村さんらがきたことで「地元のスタッフにゆとりが生まれた」と言い、今年もおてつたびで頼むつもりだ。

 県の事業としては終わったが、民間の事業としてのおてつたびは続く。県農業構造政策課は「労働力不足を解消するだけでなく、地域や農業の魅力を知ってもらい、関係人口の増加につながれば」と期待している。(大塚晶)