岸田文雄首相は20日、衆院予算委員会の集中審議に出席し、自民党がまとめた政治資金規正法改正案について、今国会で成立を期す考えを改めて示した。だが、より高い透明性を求める野党側への歩み寄りの姿勢はなく、「これで信頼回復できるのか」などの厳しい指摘が相次いだ。

 「顔を洗って出直してこいとたんかを切りたくなるぐらいだ」

 立憲民主党の野田佳彦元首相は、自民の規正法改正案をこう切り捨てた。野田氏は首相と同じ1993年初当選。ともに1年生議員として関わった30年前の政治改革に触れたうえで、「平成の政治改革の積み残しである企業・団体献金。これに全く触れないのは信じられない」と廃止を迫った。

 これに対し、首相は「多様な存在、立場から政治資金の支援をいただき、政治活動のバランスを取る」として、廃止に否定的な考えを示した。日本維新の会の青柳仁士氏が「大事なのは多様性ではなく、適切性だ。適切でないところからは1円も受け取ってはいけない」と再考を求めても、首相は「議論を深めていきたい」と述べるにとどめた。

 自民派閥の裏金事件の発端となった政治資金パーティーをめぐっては、立憲や国民民主党などが全面禁止を求める。一方、自民案ではパーティー券の購入者の公開基準を現行の20万円超から10万円超に引き下げるとしている。

 立憲の落合貴之氏は「これで透明性が高まるのか」とただしたが、首相は「パーティー券の販売実態を踏まえつつ、明確な基準額として10万円超という額が適当である」と断言。だが、10万円がなぜ適当なのか説得力のある説明はなかった。

 使途を公開しなくてもよいことから、不正の温床とも指摘され、二階俊博元幹事長が5年で50億円も受け取っていた「政策活動費」も論点となった。自民案は大まかな支出項目の公開にとどめるとしている。日本維新の会の藤田文武幹事長は「疑念は永遠に続く」とし、領収書の提出を求めたが、首相は「私的流用ではないかという指摘もあるが、自民案は透明性の向上に資する」と繰り返すばかりで、提出に応じることはなかった。