ベトナムで20日、新たな国会議長にチャン・タイン・マン前副議長(61)が就任した。前任のブオン・ディン・フエ氏(67)が「規則違反」を理由に今月、解任されていた。国会議長は国を一党支配する共産党の権力序列4位で、最高指導層の一人にあたる。

 20日の国会で、全会一致で議長に選任された。ロイター通信によると、マン氏は宣誓式で、国と国民、憲法に忠誠を尽くすとし、「与えられた全ての任務を果たすよう努力する」と述べた。

 マン氏は経済学の博士号を持ち、南部メコンデルタの最大都市カントー市幹部などを経て、2021年から副議長を務めた。議長としての任期はフエ前議長の残りを引き継ぎ、26年までとなる。

 ベトナムでは昨年初めから1年余りの間に、権力序列2位の国家主席2人と4位の国会議長が相次いで途中辞任する異例の事態が起きている。背景には、最高権力者のグエン・フー・チョン共産党書記長(80)が推し進める「反汚職運動」が関係しているとされる。

 23年に当時のグエン・スアン・フック国家主席を新型コロナウイルス対策に絡む汚職事件で引責辞任させた。今年に入ってからもフエ氏とボー・バン・トゥオン前国家主席を「世論や党、国家の評判に悪影響を与えた」などとして解任。詳しい理由は明かしていないが、汚職事件に関連した事実上の更迭との見方が大勢だ。

 また、後任の国家主席には、トー・ラム公安相(66)が就く見通し。公安省は日本の警察組織にあたる。汚職捜査の権限も握っており、ラム氏は反汚職運動の中心的な役割を担ってきた。チョン書記長と関係が近いとみられている。(バンコク=大部俊哉)