イランは20日、ライシ大統領が乗っていたヘリの墜落で死亡したことを受け、後任を選ぶ大統領選の投開票日を6月28日と決めた。候補者は最高指導者ハメネイ師の影響下にある機関の事前審査を通る必要があり、同師が近年進めてきた保守強硬路線に批判的な人は立候補が難しいとみられる。

 ハメネイ師は20日、ライシ師の職務をモフベル第1副大統領に引き継がせることを決めた。憲法の規定では、大統領が死亡などで欠けた場合、第1副大統領がその職務を引き継ぐ。国会議長、司法長官との三者で協議会をつくり、50日以内に大統領選を実施すると定められている。

 三者による協議会はこの日、大統領選の日程を決定。候補者の登録は5月30日〜6月3日、選挙戦の期間は6月12日〜27日朝とすることを決めた。

 ヘリの墜落原因をめぐっては、軍と革命防衛隊を束ねるバゲリ参謀総長が調査チームの結成を指示。20日の国営通信の報道によると、チームは高位の当局者で構成され、すでに北西部東アゼルバイジャン州の墜落現場に派遣されたという。調査終了後は、結果を公表するとしている。

 国営プレスTVによると、同州の州都タブリーズでは21日、ライシ師らを追悼する式典が行われた。通りを埋め尽くすように集まった大勢の人たちが、車に乗せられて進む同師らのひつぎを見送った。

 首都テヘランでも20日、追悼のための集会が開かれ、中心部の広場にライシ師の顔が描かれたポスターやイラン国旗を手にした数千人が集まった。合唱隊が哀調を帯びた歌を歌い、人々は音楽に合わせて胸をたたき、悲しみを表した。

 中部コム在住の大学生ホセイン・アクバリさん(21)は「ライシ師ほど国のために懸命に働いた大統領はいない。次の大統領も、勤勉な人が選ばれてほしい」と話した。

 プレスTVによると、追悼集会はこのほか、南東部ケルマン州などでも開かれたという。

 イランと外交関係を持たない米国政府は20日、公式に弔意を表明した。一方、「彼(ライシ師)の手は血塗られている」(ホワイトハウスのカービー広報補佐官)として、イランの体制による人権侵害などへの責任追及は続ける構えを示した。(テヘラン=佐藤達弥)