岩手県宮古市の水産会社「丸友しまか」の「真いわしの甘辛煮」が、3月に大阪で開かれた「全国水産加工たべもの展品評会」で、2位にあたる水産庁長官賞に輝いた。サンマやサケの不漁を受け、三陸のマイワシを使って逸品に仕上げた。

 真いわしの甘辛煮を開発したのは昨年秋。サンマやサケ、スルメイカの慢性的な不漁で、原料の確保は頭の痛い問題だった。目を付けたのが、収穫量が安定し、脂がのった三陸産のマイワシだった。島香尚(ひさし)会長(71)は従業員と試作を重ねた。

 スタッフは会長、社長、アルバイトも含めて12人。作業はすべて手作業だ。イワシの身が崩れないように圧力鍋は使わず、弱火にした大鍋で骨まで軟らかくなるように4時間ほどじっくり煮込んだ。保存料や化学調味料は使わず、調味料にもこだわった。

 全国水産加工たべもの展への出品は初めてだった。スケトウダラを使った「揚げかまぼこ」と真いわしの甘辛煮の2種類で挑んだ。真いわしの甘辛煮を出品した「水産物つくだ煮」部門には全国から283点が寄せられた。

 甘辛煮は、審査員から「大き目のマイワシの姿を崩さずに骨まで軟らかく炊き上げられ、甘辛さがほどよく、外観、味、食感の全てで楽しめる製品」と評価された。

 捕鯨船などの船員をしていた島香会長は船を下り、1984年に魚屋を開いた。三陸海岸に面した宮古だが、店の周辺は共働き世帯が多く、頭付きの魚はあまり売れなかった。専務で妻の典子さん(70)や従業員と協力し、仕入れた新鮮な魚を下処理し、切り身にしたり、料理しやすいように味付けしたり、半加工するようになった。

 同社の商品は各地の生協などを通じて全国に出荷し、ファンも多い。島香会長は「温暖化もあって三陸で水揚げされる魚の種類もどんどん変化している。サワラが急にとれた時期もあった。自分たちはとれる新鮮な魚介を届けるしかない。真いわしの甘辛煮は評判がよい。今後、別の味も考えていきたい」と話した。

 真いわしの甘辛煮は、宮古市の道の駅「シートピア なあど」や盛岡市の「らら・いわて」などで販売している。(佐藤善一)