埼玉県内唯一の公立夜間中学である川口市立芝西中学校陽春(ようしゅん)分校の新校舎の利用が今年度から始まった。19日に落成式があり、生徒や教員が新しい学舎(まなびや)での抱負を語った。

 陽春分校は、不登校など事情があって義務教育を受けられなかった人に義務教育の機会を保障する「教育機会確保法」ができたことを受け、川口市が2019年4月開校した。これまでは市内にある県立県陽高校の宿泊棟を「暫定校舎」として利用していた。

 市は「新時代の夜間中学への転換」や「誰もが通える夜間中学」をコンセプトに、旧芝園小学校の跡地に新校舎を建設した。新しい校舎は2階建てで、延べ床面積は約2300平方メートル。11の普通教室のほか、体育館機能を備えた多目的ホールや図書室もある。

 現在、在籍しているのは1年生27人、2年生10人、3年生12人の計49人。半数近くは川口市民だが、周辺のさいたま市、蕨市のほか、遠方から通う生徒もいる。

 外国人の多い土地柄を反映して、外国籍の生徒が85%を占める。国別では、中国が最も多く、次いでフィリピンやネパールなど。年代別では、10代が最も多く、最高齢は60代のフィリピン国籍の生徒だ。市教委などによると、昨年度までに106人が卒業しているが、年々、外国籍の生徒の比率が増えているという。

 落成式では奥ノ木信夫市長が「公立夜間中学専用の新校舎を設置したのは川口市が初めてではないか。新しい校舎で学ぶ喜びを感じてほしい」とあいさつ。生徒を代表して、あいさつに立ったフィリピン国籍のマコロール・ジャスティン・デルさん(3年、18歳)は高校に進学し、将来は美容師になりたいといい、「きれいな校舎で夢がかなえられるよう、がんばりたい」と日本語で語った。

 学校は、平日午後5時25分の「始まりの会」からスタートし、食事休憩をはさんで4限まで学習して、午後8時50分の「帰りの会」で1日の学びが終わる。学校行事では体育祭のほか、文化交流会と称して、餅つきや百人一首大会などもある。(浅野真)